悩みや怒りがある時、どうしてますか?私の場合、年を重ねるにつれ、「自分は何に悩んでいるのか」分析し、何を我慢できて何に努力するべきか考えるようになりました。

 

例えば「あー、あんな会社嫌だ!」と言っても、上司が嫌なのか、給料が少ない、残業が多すぎる、何が嫌なのか考えて順列を付け、どうしても我慢できないことだけの解決法を探すようにしています。その手段はいくつかありますが、そのひとつがそれなりの人物の語録?を読むこと。

 美輪明弘さんにはまった時期もありましたが、最近読んだタイトルの本は新鮮でした。

 

著者の益川敏英博士は、素粒子研究の第一人者で、2008年にノーベル物理学賞を受賞した方。

日本人の受賞はもう珍しくないので、お顔が出てこないことが申し訳ないんですが・・・。

 

エライ物理博士なのに何冊も著作を出しているのは、小学校高学年~大学生までとにかく読書に明け暮れたというほどの本好きのためでしょう。そのせいか、短文なのに描写が実に的確で驚きました。この本は博士の人生観をショートエッセー風に書いたもの。1ページに数行しか書いてないので、夜寝る前に「おいしい紅茶を飲む」ような感覚でちょこっと読むのにも最適です。

 

中でも特に印象に残った項目が、

「これが自分の進むべき道かもしれないと感じるものがあったら、まず一歩そこに踏み出してみる」

こんなことやって何になるのだろうとか、失敗したら・・・と考えてしまう時に勇気が出ます。

 

そして「おまえの努力が足りないのだと言えるほど、人生は単純なものではない」。

どんなに努力してもうまくいかない。そういう中でも、その道を歩んでいくしかない人はたくさんいる。そういう結果が出ない人に向かって「おまえの努力が足りないからだ」と言えるほど、人生は単純なものではないとおっしゃるのです。そして最後に、「成功した人間が傲慢になるのは僕は大嫌いです」と結んでいます。

 

これを読んだ時、涙が出そうになりました。何と人生の不条理を見抜いた言葉だろう!と。

 

正直、私は理系人間が好きじゃありません(でした、と言っておきましょう)。というのも・・・。

私はPCを筆頭にデジタル機器類が本当に苦手で、某知恵袋を筆頭にいろいろな質問サイトにしょっちゅう出します。もしくは周りの人にも聞くんですが、質問者を小ばかにしたり、揚げ足取る回答者が少なくありません。もしくは「ビギナー相手にそんな説明無理じゃん」という理論を延々と挙げるとか。相手の身に立つという考え方ができないのかなと思うことがよくあります。

デジタル機器無しでまわらない世の中とはいえ、そんなに使いこなせることが偉いか?

それとも、こういう場で人を罵倒することでしかストレス発散できないタイプ?

アンタができないことを出来る人は、世の中にゴマンといるからねー!でも誰もそんなに威張らないよー!!(怒りがこみあげてくるので止めます)

 

ところがこの本を読んで、理系=冷たい理屈こね屋、もしくは傲慢な人、という概念が崩れました。ましてやこの方、ノーベル賞受賞という理系の中でも最高ランクの勝ち組じゃないですか。それなのに、こんな考え方をする、やはりノーベル賞取るぐらいの方だと、思考が柔らかいというか感性も優れているのでしょうか。それとも個人の資質の問題でしょうか。

 

お坊さんとか、さんざん苦労した年配の芸人さんとか、いろんな方の「生き方本」ありますが、この本はライト感覚で読める1冊としておすすめです。特に就活や仕事に行き詰っている方は、読んでみてください。きっと心が晴れると思います。