『でーきたー!♪』
僕は鏡を見る、あ、意外と普通だ。
良かった、リリアさんに頼んで正解だったみたいだ。
『はぁ~♪サラサラでツヤツヤでいい髪質だったわぁ///持って帰りたいくらい♪』
僕の髪の毛をですかっ!?やめてください…!?
なんとか荒ぶってるリリアさんをなだめて周辺を綺麗にし、最後にお礼を言ってリリアさんの部屋を後にした。
あの会話の後すぐに取りかかろうと言われて半ば強制的に連れて来られたのだが、リリアさんの髪を切る速度が速すぎて5分程度で終わってしまった。
あの人…なんでもできるんだろうか…
というか、もう少しなんかこう、「貴族!」って感じの人かと思っていたのだけど、若干(というかだいぶ)ズレてる気がしてきたよ。
嫌いではないですよ?
たまに怖いだけです色んな意味で。
『おーもう終わったのか?だいぶマシになったじゃねーか!てかうめーなリリアさん…今度俺も切ってもらおうかな?』
『うん、そこら辺の床屋行くよりもオススメする』
なにより切ってる時すごい楽しそうだったし。
人の世話するのが好きなのだろうか?
『それよかどーだったよ!?』
『え?なにが??髪を切るの?うまかったけど…』
『ちげーよ!』と、レイが話を遮ってつっこんできた。
他になにがどーだったというのだろうか?
『お前、女性の部屋に行ったんだぜ?ほらなんかこー、いい匂いがしたとか、可愛らしい物があったとかさ?』
『あー…ハーブの香りがしてたような気がする』
それを聞いたレイは呆れたような顔をして僕を見つめていた。
『お前に聞いた俺がバカだったわ』
えぇぇ!?匂いの事聞かれたから話したのに!?
『とりあえずたまには温泉でも行くかね~、髪の毛切ったばっかだし、疲れてるだろ?』
『ん~…うん、疲れた』
たくさんの人と一緒に入浴するのは少し恥ずかしいけど、たまにくらいならいいでしょ。
そうして僕とレイは、宿舎を出て町の温泉へと向かった。
この町は小さいけど、結構色んな店や物がある。
港と王都の間にあるこの町は、商業者の休憩所によく利用されていて、その間に商人の人達が物を売ったりしてくれるのだ。
おかげで貿易が盛んになり、ギルドが建ってからは近隣の村や町からも若手の人達が結構立ち寄るようになって、さらに発展していった。
それでも、この町は田舎のように人々が温かく、みんなが家族のように信頼しあっている。
そんな町だからこそ、僕やレイは育ってこれたのだろう。
大きな都市へ行くと、孤児や無職者は奴隷商に捕まり、強制労働や奉仕をさせられるという…
ここには奴隷はいない、皆が家族だから、孤児院や、無職者が寝泊まりできる施設だってある。
そして、仕事ができるよう支援する。
だから、この町は無職者が少ない。
みんなが笑って暮らせる町なのだ。
『着いたぜ~♪』
『よし…行こう…』
僕は真剣な表情で、1度深呼吸をし、温泉屋に入る。
なんでそんな気張るのかって…それは……。
『こーーら!ハルちゃん!!そっちは男湯だって毎回言ってるでしょう!!いい歳のおなごが男に裸体を見せるもんじゃあないよ!』
『おばーーちゃん!毎回僕は男だって言ってるでしょう!』
『えぇ?なんだって?もっと大きく言ってくれなきゃ聞こえないよぉ?!最近の若いもんは恥を知らないんだから…私が若い頃はねぇ?女が男に裸を見せる時は…クドクド』
『だーかーらー!!!』
そう、80歳くらいになるここの温泉屋のお婆ちゃんは、毎回僕の事を男湯に入れてくれないのだ。
心配してくれるのは凄く嬉しいんだけど、それでも女湯に入るわけにはいかないから頑張って説得する。
これが粘る時は30分近くかかるのだ。
『俺は先に入ってるから頑張れよ~♪』
『ちょっ!レイ待ってよ~!』
『こらこらこら!ハルちゃん!』
『ふぇぇ~…(泣)』