あれから一年・・・
ふたたびこの氷瀑を訪れました。

ほとんど埋もれかかっているF1を越えると、大滝が眼前にその姿を現します。
その瞬間、私には雄大な白い墓標として目に映りました。


香華をたむけての献花、そして黙祷・・

 

今日はかならずこの氷瀑を登るつもりです。
それが天国にいる彼女との約束です。

Oさん、そして錦少年さんがそれぞれにルートを決めてリードしていきました。
彼らの姿が視界から消えていき、つづいてSさんと私の番です。

この滝をリードで登れるほどの技量を持ち得ない私は、トップロープでトライさせてもらいました。
右手のバイルをしっかりと氷面に打ち込み、そして左手のバイルも同様に打ち込みながら、アイゼンをしっかり氷に乗せた時、体がふーっと上がりました。

 

中盤、腕が疲れてきてフイフイに体を預ける場面もありました。
ギャップを越えて終了点が見えてきたとき、一瞬ですが彼女と一緒に登っている感覚にとらわれました。
 

きっと彼女が登らせてくれた大滝なのです。
先程までは白い墓標に見えた氷瀑が、登り終えた今はごく普通の氷の滝に戻ってくれました。

春がすぐそこまで迫っている八ヶ岳山麓に向けて、雪と氷の摩利支天沢を後にしました。