12月25日、福井県の高浜原発3号機で原子炉に核燃料を入れる作業が始まりました。このままいけば、川内原発の2基に次いで3基目の再稼働になる見通しです。
高浜原発3・4号機については、今年4月、福井地裁が運転差し止めを命じる仮処分決定を出しており、関電は手続を進められずにいました。
その決定が24日に取り消され、再稼働を法的に制限するものがなくなったとして、準備が進められているのです。
決定を取り消したのも福井地裁ですが、4月と12月で全く異なる結論となっているのは何故でしょうか。
そもそも裁判長が違うという点があげられますが、判断の分かれ目となったのは、新規制基準の捉え方です。前回は、福島の事故の被害の深刻さを重視して「基準は緩やかすぎて合理性が無い、適合しても安全は確保されない」としました。それに対して、今回は、「基準は最新の科学的な知見を踏まえた評価を求めており内容は合理的だ」として全面的に肯定するもの。
どちらか一方が完全に正しく、他方が完全に誤りであるということはないでしょう。
重要なことは、この裁判では原告も被告も徹底的に争う姿勢を見せており、最高裁での確定判決が出なければ決着はつかないであろうということ。
そして、仮に、最高裁が差止を認める判決を出せば、結局は原発を稼働することはできなくなるということ。このことは、今年4月の経産委員会で前大臣の宮沢さんと以下のやり取りをして確認済みです。
(一部抜粋→
松田:
「宮沢大臣にお聞きしたいんですけれども、このまま高裁、最高裁まで行って、高浜原発、大飯原発の再稼働を禁止する本案の判決、これが確定した場合、これらの原発を稼働させるようなことはできないという認識でよろしいでしょうか。」
大臣:
「あくまでも仮定の話として、最高裁まで行って確定した場合には当然そういうことになりますが、そうならないように期待をしております。」)
先日再稼働を禁ずる仮処分は取り消されましたが、原発の再稼働は、まだまだ不安定な状況なのです。
関電も一企業ですが、このような司法リスクの中で再稼働を無理やり進めるというのは経営判断として問題があると思います。また、規制基準を根本から見直すことをしていない国も問題です。結局今の基準自体がダメだったとなれば、関電の役員には任務懈怠による損害賠償責任が、国には国家賠償責任が生じる可能性があります。
日本では、ビジネスでも行政でも、こうした訴訟によるリスク、法的リスクを適切に把握し対処することができていないところが多々見受けられます。
総括原価方式が残っている現状では、かかった費用が全て国民負担になる可能性が高いことを考えても、やはり最終的に確定するまでは再稼働をすべきではないと考えています。
来年も引き続き提言していきます。