例年、多くの企業は「内定式」を10月1日に開催します。


しかし、今年は採用が進んでおらず、日程を延期しなくてはならない会社も出ているそうです。HR総研の調査では、この日に内定式を予定している大手企業は昨年12月段階では70%だったのに対し、今年8月には55%に減少しているとのこと。


このような状況の原因として考えられるのが、就活新スケジュールの導入です。


昨年までは、外資系やIT系の企業が大学3年生の後半から採用活動を実施、その後経団連加盟の大企業が4年生の4月から面接を開始し7月初旬までには実質的な内定を出す、中小企業は6月頃から採用を本格化し大手の選考に漏れた学生を中心に採用するという流れでした。


ところが、2016年度の就活については、政府の要請によって経団連の「採用選考に関する指針」の手引きが改定され、広報活動は3月1日から、選考活動は8月1日解禁と後ろ倒しになりました。


その結果、何が起こったか。
「優秀な人材を確保したい」との思惑から経団連の加盟企業による指針を守らない「解禁破り」が横行したと言われ、解禁日の段階で内定を取得していた学生が65%に達しました。


また、就職活動中の学生の割合が3月から7月を通して8割を超え、9月1日時点でも37.5%(昨年は20.9%)で、就活が長期化しています。

経団連の指針は、「学生の学習時間の確保、学生の留学等の促進」という観点から改定されたのですが、これでは本末転倒です。


結局、どのような自主規制をしても、自分に不利なものであれば、それを破るところは絶えません。このことは、私の就職活動時代、そしてリクルーター時代から変わっていません。あまり守られないルールを作るのはやめて、できる限り採用活動を自由にした方がよほど学生のためになるのではないかと思ってしまいます。


例えば、2年生までは企業からのコンタクトを不可とし、3年生以降は自由とする。そして、インターンなどをどんどん受け入れる方式にする。
学業がおろそかになると言いますが、真面目な子はどんな状況でも勉強しますし、しない子はしません。入学するのが比較的簡単で、卒業するのが大変な欧米諸国と違い、日本の大学は単位認定が甘いことに原因があると思われます。


であれば、大学は社会に出る前の最後の学びの場ですので、学校側も、将来の自分の目的や目標を考えさせるためにどんどん先輩に会うことを推奨したり、インターンを経験してもらうほうが、学生にとってためになります。


入学当初は明確な目標を持っていなかった学生が、社会で活躍する先輩と出会い、自分の目指すべき方向を具体的にイメージできれば、学習意欲が湧き立ち、かえって勤勉になることも期待できます。
(学ぶためには刺激が必要ですが、そのためにはアカデミックな世界だけでなく、社会経験が大切です。)


また、以前も提言しましたが 、学生のことを考えると、新卒一括採用の仕組みを廃止することが重要です。


これからの日本を支える人財が育つ環境を提供するにはどうすべきか。抜本的な制度変更も含め、引き続き検討していきたいと思います。
いずれにせよ、大人の勝手な思惑で仕組みがころころと変えられて困るのは若者です。政府も経団連も、本気で学生の視点で物事を考えなければなりません。