昨日の安保法案に反対する国会前デモ。呼びかけを行った市民団体の一つ「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の発表では、集まった人数は約12万人とのことでした。



しかし、警察関係者の調べでは3万人あまりとの報道もなされています。
(警視庁は正式には人数を公表しておらず、この数字は報道各社が取材をして幹部等から聞き出したものとのこと)



このような差は、デモのたびに指摘されてきました。
例えば、1960年6月18日の安保闘争デモでは、主催者側は33万人としていましたが、警察側の調べでは13万人。また、2012年7月29日の原発再稼働反対デモでは、主催者が推定20万人と発表したのに対し、警視庁幹部の説明ではわずか1万2500人(16分の1)でした。



ここまで開きがあると、いずれのデータも信憑性が無く、結局は民意を大きく見せたい主催者と、それを否定したい政府の息が掛かった当局が、それぞれの思惑から実際と違う数字を発表しているというイメージをつくってしまうのではないでしょうか。



これはどちらにとっても良い状況とは言えません。



国会での審議も極端なレッテル貼りをして始まり、「平和安全法案」であると訴える安倍政権VS「戦争法案」だと主張する反対野党という、最初からお互いを罵り合う「右」対「左」の闘いになってしまい、冷静に中身を審議できてないのではないかと国民に疑義が生まれてしまいます。


このような状況は議会制民主主義の良い姿とは言えません。我々は、漠然としたイメージやイデオロギーの論争ではなく、実体に即した議論をしていかなければなりません。



そのために重要なのが客観的で検証可能な「事実」です。



警視庁は意図していない論争や混乱を招くし、公表を目的に集計しているわけでもないため正式発表していないとのことですが、デモ参加者の人数は重要な国民的関心事ですし、後々の警備体制の検討にも不可欠ですので、しっかりと把握しておく必要があります。また、主催者も今後のデモ計画を立てる上で正確な人数を知っておくべきでしょう。



今回のような大規模デモの時は、野鳥の会のような第三者にボランテイアとして参加してもらい(もしくは両サイドから同額のフィーを受け取って)、後から確認できる形である程度信頼できる人数を出してもらうのも手かもしれません。



いずれにせよ、今回は国会議事堂の前を埋め尽くすほどの人数が集まったということで、国民の危機感が非常に高いことは間違いありません。



会期末まで1か月を切り、与党は地ならしの為に採決日をリークし始め、衆議院での3分の2以上による再議決の可能性にも言及したようですが、当初の約束通り、①60日ルールの適用はしないことと、②真摯に修正協議に応じることだけは、少なくとも守ってもらいたいと思います。参議院では、「良識の府」として国民の意思を踏まえながら議論を尽くさなくてはなりません。