皆さんは、DNA鑑定で遺伝的なつながりが証明されても、法律上の親子とは認められない場合があることをご存知でしょうか。


夫婦の受精卵を代理母が受け入れ、出産が行われた場合がそれに当たります。


このケースでは、子どもの遺伝子は夫の精子と妻の卵子に由来しているので、遺伝的な親子関係は、代理出産を望んだ夫及び妻との間に認められます。


しかし、法律的にはそうはならないのです。


親族関係については民法第4編に規定されていますが、100年以上前の1898年にできたものであるため、第三者が関わる妊娠・出産などの想定がされておらず、「親」の決め方についての規定がありません。


そんな中、1962年には、最高裁が「生んだ女性が母」であるとの判決を下しており、それが現在まで有効となっています(向井亜紀さんと高田延彦さんが提出した出生届の不受理についての2007年最高裁決定でも、その論理が堅持されています)。


そのため、代理出産では、不妊治療を行ってきた妻と子の間に法律的な親子関係が認められないのです。


一方、卵子提供により出産が行われた場合は、妻と子の間に遺伝的な親子関係がないにも関わらず、法律的な親子関係が認められることになります。
(これは野田聖子さんのケースです)
同じ不妊治療でも、まったく異なる結論になるのです。


代理出産を巡っては、女性を生殖の道具として扱うことになる、依頼者と代理母が子どもを奪い合う危険があって子どもの福祉に反する、子どもを金銭で売買することにつながる等の理由で否定する意見があります。


しかし、最高裁は、卵子提供は是だが、代理出産は否であるといっているわけではありません。


2007年の決定では、代理出産の適否については言及せず、「現行民法の解釈としては、女性が出産していなければ卵子を提供した場合でも法的な母子関係は認められない」と判断したのです。その上で、「今後も民法が想定していない事態が生じることが予想され、立法による速やかな対応が強く望まれる」と付言しました。


この最高裁の判断から8年。未だに第三者が関わる不妊治療についての立法はなされていません。


今年8月、自民党内のプロジェクトチームが、第三者の卵子や精子を使った場合の親子関係を規定するための民法の特例法案をまとめ、今国会での提出を目指しているという報道がなされています。


その案では、卵子提供では出産した女性を「母」とし、精子提供では提供に同意した法律上の夫を「父」と規定しているとのこと。しかし、代理出産については党内の慎重論が根強く、見送りとなるそうです。


昨年2月に厚労省研究班が実施したインターネット調査では、子供を望んでいるのになかなか恵まれない場合に、約3割もの人が代理出産を利用したいと回答しており、肯定的な考えも決して少なくありません。


今の日本には、高度生殖補助医療の技術が既にあります。夫婦と代理母がそれぞれの自己責任と自己決定で代理出産を決めた場合には、非難されるべきではないと考えます。


一番大切なのは卵子や分娩の有無ではなく(勿論、それも重要ですが)、誰が望んで子どもが生まれ、誰が責任をもって育てるかだと思います(それを事前確認とし、破った場合の厳罰化で問題は減らせるはずです)。


「多様なライフスタイルにあった社会を目指す」が、日本を元気にする会の基本理念。代理出産に関しても、今後認められるようにすべく、積極的な提言をしていきたいと思います。