木曜日は経産委員会で承継円滑化法の審議がありました。
広島原爆の日でしたので、会議に先立ち委員全員で黙祷を捧げました。
特別な日だったということ、また宮沢大臣が広島選挙区からの選出であることから、今回の安保法案で核兵器の輸送が可能だということ(前日に中谷防衛大臣からそのような発言がありました)についてどのように考えているか、冒頭に聞いてみました。
それに対しての答弁は、「法案の具体的中身につきましては担当大臣ではございませんのでこの場で答弁するのは差し控えさせていただきますけれども、やはり核兵器の廃絶に向けての努力ということは大変大事なことだと思っております」という内容で、踏み込むのを避けたものでした。
(確かに経産大臣は安保法案を所管していないかもしれませんが、閣議決定した閣僚の一人ですし、もう少し強い決意を語って頂きたかったです)
本題の承継円滑化法の内容に関しては、大きくわけて2つの質問をしました。
ひとつが、個人事業主と株式会社化について。
個人事業主は約220万の小規模企業のうち6割を占めていますが、本改正の中心である遺留分に関する民法の特例を始め、会社にしか適用されない法律がさまざま存在します。
日本においては一人株式会社が認められており、かつ現在は資本金が1円でも会社の設立が可能となっています。また、個人事業主は事業開始時に株式会社を選択することもできますし、途中からでも株式会社化することが可能です。
そのような中、双方のメリット・デメリットを検討すると、(特に今回のテーマである「承継」ということで言えば)個人事業主の場合は死亡した時に預金口座が一時的に凍結されるなど、問題が生じることが多々あります。よって、できる限り会社形態をとるほうが望ましいと私は考えています。
そこで、資本金が1円の場合でも15万円もかかる登録免許税や、1件5万円もする定款認証の手数料を下げる等、株式会社が選択されるための積極的な施策を進めていく必要があるのではないかと提案をさせて頂きました。
しかし、残念なことに、色よい答弁はいただけませんでした。
もうひとつは個人保証について。
事業承継の妨げになるものとして、経営者の個人保証の問題があります。これは、起業の際もネックになります。
経産省は、昨年2月1日から、「経営者保証に関するガイドライン」の適用を開始させています。これは、「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと」を内容とするもので、経営者保証を禁止するという考えが全面に出ているものです。
また、安倍総理も「ベンチャーを育てるためにも『個人保証』偏重の慣行を断ち切ります」と、今年2月の施政方針演説で明確に述べています。
保証については民法に規定がありますが、このような状況ですので、経営者保証については禁止・廃止する方向で改正がなされるものかと私は最近まで期待していました。
しかし、今年3月に閣議決定された「民法の一部を改正する法律案」を見ると、経営者保証が禁止・廃止されるどころか、公正証書さえあれば第三者保証さえも可能だという内容となっており、去年2月に出された中間試案よりも、かなり後退したものとなっています。
そこで、法務省の審議官に来て頂き、「なぜこのような法案になったのか」「これは安倍総理の施政方針演説と矛盾するものではないのか」「法務省としては『経営者保証』の問題についてはどう考えているのか」などを質問しました。
それに対する答弁は、「個人保証を制限しすぎることにより融資を受けにくくなることを危惧する意見が中小企業団体を中心に主張された」「経営者保証(代表の連帯保証)については保証人が主債務者の状況を十分に把握できる立場にあり、その不利益を十分に認識せずに保証契約を締結するおそれは低いと考えられるから意思確認は無用であると判断した」というものでした。
これは銀行の意向を反映させた「結論ありき」の内容だと思います。
少なくとも、私や、私のまわりの経営者で「代表取締役=連帯保証が当たり前」という銀行の考え方を良しと思っている人は一人もいません。
一度失敗すれば、全てを失い、再チャレンジの道が閉ざされてしまうからです。
日本の銀行にも米国や欧州銀行並みの審査能力を身につけて頂き、「事業そのものに融資をするのが当たり前」の感覚にしていかないと、ベンチャーが育つわけがありません。個人保証や担保に依存してしまうと、審査能力が無くなる上に、事業内容に対して適切なアドバイスを出すことも出来なくなってしまうのです。
口だけではなく、本気で「ベンチャー立国」を目指していくのであれば、連帯保証ありきの風潮を変えていく必要があります。
これだけ金融緩和を行っても、ベンチャーや中小企業に資金がまわっていかないのは、銀行の審査能力が無いのも一因なのです。
大企業や大手銀行と蜜月関係を築いていきたい与党は、色々と理由をつけて、本当に必要な改革を先送りするばかり。
日本を元気にする会は、経済を好転させる「新陳代謝」実現の為にも、引き続き様々な政策の提言を行い、推進していきます。