しかし、とんでもないことを東芝の歴代経営陣はしでかしたものです。

第三者委員会によれば、7年もの間、粉飾決算を続け、その総額が1562億円にものぼるとのこと(その額も確定しておらず、増える可能性があります)。
しかも、その偽の数字をもとに、資本市場から調達した公募増資などの合計が約1兆円。

この組織的な不正経理で露呈されたのは、「社内コンプライアンスが徹底されておらずガバナンスも機能していなかった」という一言では片づけられない、日本社会の根本的な問題だと思います。

つまり、ルール違反を知ったどの社長も、役員も、監査役でさえ、声をあげることができなかったという事実。
(しかも、今回は監査法人もその一端を担っていた可能性があります。上場企業の粉飾決算は、会社側が監査法人を騙すか、監査法人が見逃すかしかありません)

これが欧米諸国であれば、正義感の強い人間が5人の内に1人や2人は存在して、とっくに不正が暴かれていたと思います。特に「チャレンジ」と呼ばれる過大な目標をトップダウンでつくり、社員に押し付け、無理なら数字を操作しろと言うパワハラが行われていたなら尚更です。
しかし、日本の「ムラ社会」意識、そして「空気」がそれを阻止していたのです。

「正義」や「公正」より「和」を大切にする。
自分たちの組織や団体を傷つけるような批判は、それが正論であってもしない。

「村八分にされるのが怖いから」

子どもの頃から体に叩き込まれたその習性を、大人になっても、社長になっても、政治家などの公人になっても、払拭することはできないのです。ここのマインドを変えていかない限り、マジョリティに賛同しておくのが無難、自分の考えで議論に参加するのは得策ではないという意識が蔓延し、日本は民主主義においても中途半端な国に留まってしまうでしょう。

細かい精査はできていませんが、今の段階で表面化している情報を基に判断しても、東芝は上場廃止にするべきだと思います。

ここでも、一部の政治家や東証の「身内を守る」意識が働いて、東京電力やオリンパスの時のように「上場廃止させない」という結論に達したとしたら、日本の市場はまた歴史に汚点を残し、海外投資家の信用度が下がってしまうでしょう。

「信用できない」というイメージが焼き付いてしまうと、今のような上昇相場の時は良いのですが、何かの問題で市場全体が下がるような事態になった時は、下落スピードと下落幅が非常に大きくなります。最悪なケースも想定されます。

2013年東証の制度改正で「監理銘柄」から「特設注意市場銘柄」という指定ポストができました。この改正も大企業を守る為であり、問題点が多々あると思います。東芝はそこに入れられて社内改革を試みるとのことですが、刑事事件へ発展するのか、上場廃止になるのか、今後の動きを注視していきたいと思います。