ここ最近は、国会関係のニュースといえば安保法制一色ですが、会期延長後も様々な法案の審議が粛々と進められています。

先週の木曜日には、参議院・経産委員会で、貿易保険法の改正について質疑が行われました。

この法律は、輸出入等の対外取引において生じる、通常の保険では救済されない危険に備えるための制度(貿易保険制度)について定めたもので、国際紛争やテロ、相手方の破産や債務不履行等をカバーすることを目的としています。

日本の貿易保険は、かつては通商産業省(現・経産省)が行っていました。それが、2001年の中央省庁改革によって、保険引受等の実務そのものは新たに設立された独立行政法人日本貿易保険(NEXI)に移され、国の役割はNEXIからの再保険の引受けとなったのです。

今回の改正は、2001年以来の貿易保険制度の大転換で、NEXIを特殊会社化(100%政府出資の株式会社化)し、再保険制度を履行担保制度へ移行させるというもの。

それに伴い貿易再保険特別会計が廃止されますが、一点大きな問題があります。それは、債務削減影響額をどう扱うかです。

日本では、国際的な経済協力の観点から、支払が困難に陥った債務国に対し、公的債務のリスケジュールを行っています。2013年度までに削減した額は1兆1731億円で、国及びNEXIにかかわる分が9066億円となっています。

このうち債務免除等を行わなければ回収可能であった金額は、過去の実績に照らして回収率89%で推計され、8069億円だとされています。

この債務削減影響額については、これまでに一般会計から国民負担によって累計で2533億円が貿易再保険特会に繰り入れられていますが、まだ5536億円も残っています。

今回の改正で特会が廃止されるため、今後はそのような形での補填はできなくなります。しかし、本法案では、政府はNEXIに対し免除又は放棄した額を交付金として交付することができると定め、引き続き国民負担で損失を埋めることができるようにしているのです。

ここで慎重に検討しなくてはならなのは、そもそも輸出入業者が加入する貿易保険で生じた損失を、本当に国民全体で負担する必要があるのかということです。NEXIが株式会社化されるのに伴い、これ以上の国民負担をやめることも考えなくてはなりません。

政府は、国として判断した債務削減の影響を利用者に求めることは適切でない、そのため差引額の全部又は一部をNEXIに交付する必要があるとしています。しかし、外国に対して公的債務を免除等し、その後NEXIには国費での埋め合わせを行うということは、オフバランス的に国民負担によるODAを実施しているようなものです。

そのようなことを行うのであれば、少なくとも、いつまでにいくらの支出をするかくいらいは決め、しっかりと公表すべきです。それが、財政民主主義の観点からの要請です。

委員会でもそのように質問しました。

ところが、政府の答弁は、「(交付金の交付は、)時々の財政状況とNEXIの財務状況ということを勘案して年々の予算の中でお決めいただくということになっております」というもの。予め時期や額を示すことはしないということです。

決算委員会の締めくくり総括における総理への質問時にも指摘しましたが、政府は海外への支出をあまりにも野放図に行っています。また、日本からの多額のODA等は、日本政府⇒外国政府⇒日本企業というように流れているなどと言われたりしますが、貿易保険についてもこのような構図があてはまるのではないでしょうか。ODAを利用して特定の国内企業に利益誘導をしていると疑われないようにするため、透明性の確保が不可欠です。

そして、財政が極めて厳しい状況ですので、国内への支出も国外への支出も、内容と額が適正かをしっかりとチェックすることが何より重要です。
日本には大盤振る舞いしている余裕など無いのです。