世界に名を馳せるような大会社でも、最初は1人か若干名の創業者から始まり、小規模事業主、中小企業、中堅企業、そして大企業から上場企業へと成長していきます。

売り出す商品やサービスがすばらしいとしても、発展する過程で一番大変なのは人とカネです。

ゼロから起業する時に人は自分1人で何とかなる場合も多いのですが、カネは無ければどうしようもありません。日本には実績がない起業家の経営理念に賛同し、寄付してくれる人はとても少ないのが現状です。結局、創業者が全てのリスクを背負って、借金をするところから始めるケースがほとんどです。

そんな中、「エンゼル税制」の改正が行われようとしています。
元々は1997年に始まった制度で、個人投資家が「特定新規中小企業者」の株を買って投資した場合に、株で利益を得たときには4分の1に圧縮して申告でき、損したときには3年間まで赤字を繰り越しして税負担が軽くできるというルールです。

今国会の「地方分権第5次一括法案」には、この税制適用を認定する機関を経済産業省の出先機関から都道府県に移すということが盛り込まれています。ビジネスの現場から遠い霞が関よりも各都道府県庁で審査されるのは一歩前進ですが、自治体の公務員の方々も実業界とは違う世界で生きていますから、ベンチャーやエンゼル投資家のことを理解できるのか、という課題が残ります。

私は、このような事前確認制度を緩和して、もっと多くの起業に適用させるべきだと考えています。日本のエンゼル税制は条件が厳しいのです。毎年投資家が申告をすれば原則受け付けて、問題がある場合は税務署が後で調査するという形式にすれば良いと考えています。

私は起業の時、借金する際は「連帯保証」、ベンチャーキャピタルからの出資の際には「生命保険」に入らされました。27歳で若かったからこそ、そのリスクに目をつぶって飛び込むことができたのでしょう。その時の不安を思い返してみると、新しい起業家がなかなか増えないのも仕方が無いと思ってしまいます。

また、投資した多くの企業が無くなっても、個人ではなんの税制的なカバーも受けていません(生まれたばかりの会社に多く出資しましたが、まだ残っているのは1/10ほどです)。

やはり、このままでは新規開業もそれを支援する個人投資家も増えるようなことがないと思ってしまいます。ベンチャー起業家とエンゼル投資家を増やすための、第一歩さえも踏み出せていないのが日本の現状なのです。

両方の苦労を知っているからこそ、抜本的な改正をしっかりと推進していきたいと思います。