5月29日に口永良部島(くちのえらぶじま)でマグマ水蒸気噴火があり、火砕流が火口から2.2kmもの距離をたったの70秒で流れ、海まで到達しました(時速にすると115キロ。早いものでは時速200キロに達するものもあります)。

九州電力は、注意を必要とする川内原発の半径160km圏内にある過去の巨大噴火跡のうち、3つについて火砕流が原発のある場所に達した可能性があると認めています。
また、桜島を含む姶良(あいら)カルデラからは川内原発に火砕流が5分で到達するというシミュレーションデータも出されています。

実際にそのような影響が出る巨大噴火が日本で起こるのは1万年に一回と言われていますが(火山学者の中には巨大噴火は6000年に一回は起こると警告している人もいます)、前回の巨大噴火(鹿児島県沖、鬼界(きかい)カルデラ)は7300年前に起こっています。

昨日、私は原発と火山の危険性について原子力規制委員会の田中委員長と宮沢大臣に次のような質問をさせて頂きました。

「火山の巨大噴火に関して、どのように考えているか? 起こる可能性が少ないとみているのか、可能性はあるとみていて、しっかりと対策を練る必要があると考えているのか?」

「巨大噴火に繋がるかもしれないという異常を観測した場合は、原発ではどのような対応策を取ることになっているのか?」

「どの程度の異常なら、「停止命令を出す」などの基準をつくっているのか?」

それに対する答弁は以下のようなものでした:

「川内原発が稼働する今後30年くらいの間には起こらないと評価している」
(30年ということは再稼働と20年の延長も既に決めているということです)


「地形の変動が起こるだろうというところを継続的にモニタリングをしてその予兆をつかんで早急に原子力発電所を停止する」、「巨大噴火の前には適切に使用済み燃料を運び出す」

「しかし、(原発を)どの(予兆)レベルで止めるべきかということは決まっていない」

私は、どのような予兆があれば「停止命令」を出すのか、はっきりとした基準を決めるべきだと大臣と委員長に提案しましたが、非常に消極的な答弁で、結局停止命令は出さない考えだということが分かりました。

また、皆さんもご存知のように、燃料棒を取り出す作業には平均で4年かかります。しかし、異常が発見されてから、それだけの猶予期間がある保証はどこにもありませんし、実際には無理だと思います。
であれば、そんな誤魔化しの対策を明記する方がおかしいのではないでしょうか。

最後に、日本では火山の観測や研究、防災を担う国立機関がないことに触れて、噴火に対応する知識の蓄積やリスク管理体制を構築する為に規制委員会からも国に対して「専門機関の設置を要望するべきでは?」と聞いたところ、「それは我々のノリを超えている」と言われました。

この一言で、やはり田中委員長は火山の危険性をそれほど気にとめていないのだと、感じました。心配ならば、原発に対する権限をもつ規制委員会で国に対する対応を求める筈です。

世界最高水準の安全性を実現するのが、同委員会の役割のはずですが、火山国 日本で原発を稼働させる認識と対策がそのレベルかと思うと、不安を感じずにはいられません。

これでは、我々は福島原発の事故で何も学んでいないということになります。
福島原発に到達した津波も、事故以前の東電の発表によると、土木学会手法による計算で「数千年に一回」と言われていました。しかし、福島県の隣の宮城県を襲い、最高で40メートル近くもあった明治三陸地震(1896)の津波は、115年前にあったばかりだったのです。

1万年に一度、数千年に一度などと言う言葉は安全神話を作り出すための常套句でしかありません。
確かに可能性は小さいかもしれませんが、そのような危険性に対しても何かしらの準備と対策を練っておくことが真の最高水準の安全性に繋がるのではないでしょうか。

それが、我々日本人が福島の事故から学んだ最大の教訓だったはずです。

わずか4年でそれを忘れてしまった原発の再稼働と推進には全く賛同できません。