国会ではよく法案の「巻き戻し」の現象を目にすることがあります。
郵政民営化、タクシー自由化、医薬品のネット販売などもそうでした。

今日は経済産業委員会にて、「株式会社商工中金法及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案」の採決が行われました。

まず申し上げたいのが(先日の安保法制閣議決定に関する記者会見でも話をしましたが)、なぜ「商工中金法」と「信用保険法」を一束にする必要があるのでしょうか。
ここにも政府の意図が見え隠れします。
商工中金法は普通に考えれば「あれ?おかしい?」と感じる法改正で、信用保険法はNPOへの融資の際にも保証を付けられるようにしましょうという、誰でも賛同しやすい(するべき)内容です。
つまり、信用保険法があることによっての「目くらまし効果」と、「良い内容の法案が付いていることによって反対しにくい」という心理的効果を狙ってのセット販売なのです。

さて、商工中金法の方ですが、これは明らかに「政府系金融機関」の実質固定化を狙った改正です。
つまり、小泉内閣時代に進めようとした行政改革の一環である「政策金融改革」がまたここで巻き戻しにあってしまっているのです。

私は採決に先立ち、反対討論を致しましたので、それをご確認いただければ、概略をご理解頂けると思います:

『日本を元気にする会・無所属会の松田公太です。会派を代表して、「株式会社 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」に対し、反対の討論をさせて頂きます。 
本法律は、商工中金の完全民営化の実現に向けて2007年に成立しました。
当時の目的は、小さく効率的な政府の実現のために政策金融機関を再編し、必要な業務を日本政策金融公庫に一本化するというものでした。
そのために、5つの政府系金融機関が統合され、商工中金については日本政策投資銀行と共に2008年を起点とし、5年から7年で政府保有の全株式が処分されることとなったのです。

しかし、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災によって2度にわたっての先送りがされました。その時は緊急対策も必要であった為、理解はできますが、今回は明確な危機も無く3度目の先送りがなされようとしています。
(また、08と11の時にはあった目標年度を消してしまいました)

本法案には既に審議でも明らかにされましたように様々な問題点がありますが、
その最大のものは、これが通ってしまえば、法案の当初の目的を見失ってしまう可能性が高いということです。

政府は、完全民営化の方向性は変えないとしていますが、ではなぜ、ゴールの達成時期を削除する必要があるのでしょうか。どんな目標を掲げる場合でも、期間を設定するのは常識です。人間でも組織でも、「いついつまでに」という時間的制約が無ければ、達成する為の行動力が大きく減退してしまいます。

また、「危機対応業務」を責務として規定したり、「地域中核企業支援貸付制度」を創設するなど、商工中金に対して新たに強固な機能を与えようとしています。
これでは、更に商工中金に対する依存度が高まりますし、役割が増えることによって完全民営化は益々遠のくでしょう。

その他、一度は民間出身者がトップになったにも関わらず、2年前からは元・経産省の事務次官が返り咲き、現在は3人の官僚OBが社長、副社長、監査役になってしまっていること、商工中金の肥大化によって競合する民間金融機関が不利な状況になってしまうことなど、天下り先の温存につながる、そして民業圧迫が悪化するといった問題も見えます。

今こそもう一度、原点に戻るべきです。
危機対応等の政策金融業務については、商工中金や日本政策投資銀行よりも支店数が多く、セーフティーネット貸付などの実績も豊富な日本政策金融公庫に一元化するべきですし、政策金融改革を実現するためにも、年月を区切って政府保有の株式の処分を断行しなければなりません。

繰り返しですが、当初の目的をなし崩し的に変えようとしている本法案には賛成することはできません。

以上で、私の反対討論を終わります。』


日本を元気にする会では重要法案以外は原則として党議拘束をかけず、個々の議員がしっかりと審議に参加し、自分の意思で賛否を決めます(重要法案は国民による投票で決めます)。

本法律案については、会派内の勉強会等で検討した結果、あまりにも政策金融改革からかけ離れた内容であり、賛成できないということで全員の意見が一致しました。

よって、今回は日本を元気にする会として初の会派を代表した討論に立ち、商工中金法の改正案に反対を表明させて頂きました。

党議拘束をかけない法案だったにもかかわらず全員一致となったのは、元気会のメンバーには改革マインドがしっかりと根付いているから他なりません。
今後も改革を推進する志を貫徹してまいりますので、引き続き応援の程よろしくお願い申し上げます。


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