カトリックの巡礼地で、フランスにある世界遺産で最も有名なひとつ、モンサンミッシェル。

3月21日に14メートルもの大潮が発生し(前日に起きた皆既日食の影響)、18年ぶりの「狐島」となりました。

モンサンミッシェルは元々潮の干満の差が激しいところにあったため、満ち潮の時は海に浮かび引き潮の時は陸地と繋がる神秘的な小島の上にあったのですが、修道僧や訪れる人のために、1870年代に陸続きの道路・鉄道が建設されたのです。

しかし、それによって思わぬ現象が起きてしまいました。
道路によって海の流れがせき止められ、徐々に土砂が積み重なり、今となってはほぼ完全に陸続きの土地となってしまったのです。

それを元の姿に戻すため、フランス政府は橋を建設し、現在は堤防道路を撤去する工事を300億円以上かけて行っています(2015年に完成予定)。

これを聞いて思い出すのが諫早湾干拓事業。
広大な平地を得るとともに農地の冠水被害を防ぐため、1989年より工事が行われ、1997年4月14日に諫早湾が全長約7kmの潮受堤防で締め切られました。

しかし、堤防の水門閉鎖後、深刻な漁業被害が発生してしまったのです。
福岡高裁は、堤防の閉め切りと漁業被害との間に因果関係があるとし、水門を常時開放するよう判断しました(開門してはならないという地裁判決も出ています。)。

人間は時を超えて、地域を超えて同じようなことを繰り返しています。

先を見て、正しい答えを出すのはとても難しいことです。
何が正しいかを絶対の基準にしてしまえば、動けなくなってしまいます。しかしながら、たとえ間違っているかもしれないことでも、議論して納得した上での決定であれば、責任をもって前に進んでいくことができます。
だからこそ、地元の住民や、国全体に関わることであれば国民と共に物事を決めていく必要があると思うのです。

モンサンミッシェルの狐島現象を一目見ようと、21日当日は過去最高の3万人の観光客が訪れたそうです。

そういえば母も「一度は海に囲まれた昔の姿を見たかった」と言っていたなー

(一昨年、モンサンミッシェルを訪れた時の記事はこちら