心臓移植を待っていた6歳にもならない女の子が補助人工心臓内で生じた血栓が原因で脳梗塞となり、脳死状態に陥ってしまったため、ご両親が臓器移植に承諾したというニュースを目にしました。


悲しみの最中にこのような決断をすることがどれだけ大変か。
私も弟を同じ病気で、同じシチュエーションで亡くした経験から痛いほど分かります。


この女の子のご両親の決断に至るコメントを全文掲載させて頂きます。


『私たちの子は原因不明の拡張型心筋症になるまで、大きな病気をすることもなく、元気に成長してきました。昨年4月には幼稚園に入園し、初めての運動会の練習を一生懸命しておりました。運動会前日、風邪のような症状から病院を受診し、特発性拡張型心筋症であることが分かりました。12月に容体が悪化し、補助人工心臓をつけて移植を待機することしか命をつなぐ方法がなくなりました。待機している間も小さい体で度々の脳出血や数回の開胸手術に耐えておりました。さらに何度も血栓が補助人工心臓内にでき、そのたびに管の取り替えも行っており、本当に生きた心地がしない日々でした。国内待機の限界を感じ、先生にお願いし海外での移植手術を目指し動き出しました。受け入れ先も決まり、渡米への準備をしているさなかの1月上旬に最も心配していた血栓が娘の脳に飛び重篤な脳梗塞を起こしました。それでも諦めずに回復を祈っておりましたが、2日後に娘は脳死状態になりました。娘には補助人工心臓のことを「あなたのことを守ってくれている大事なものだよ」といつも伝えていただけに、本当に無念でやるせない気持ちです。娘がほぼ脳死状態にあると分かった時に私たちは、心臓移植待機中のことを思い出しました。国内では臓器提供が少ない現状を強く感じておりましたので迷わず娘の臓器を、移植待機されているお子様やそのご家族様のために提供したいと申し出ました。私たちは娘が発病してからの3か月間、暗闇の中にいました。同じようなお気持ちの方に少しでも光がともせられたらと思っております。現在の日本の移植医療の現状を皆様にご関心頂き、命のリレーが一般的な治療方法として日本でも行われるような環境に進んでいくことを望みます』


日本での脳死移植、特に子供のケースは非常に少ないのが現状です。
1997年に臓器の移植に関する法律が施行され、2010年には家族の同意が得られることを条件に15歳未満の臓器提供(ドナー)も認められるようになったものの、本日まで15歳未満は7人、6歳未満は3人という少なさです。法律が改正されても、幼い子供の移植には、未だに海外に行くしか方法が無いような状態です。


法律では脳死は死ではない(臓器移植時以外)ことや、死に対する考え方、登録/ネットワークの脆弱さ・・・様々なことが原因となっています。
また、その他の手段(是非コチラ をご覧ください)を含め、何とか救える命を一人でも多く救うために、今後も取り組んでいきたいと思います。


お亡くなりになった幼い女の子のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
あなたの尊い命で他の方の命が救われたことに、言葉にならないほどの尊敬と感謝の念を抱きます。