師走となった昨日の東京株式市場は終値で7年4か月ぶりの高値になりました。
米国株の好調を引き継いだこと、法人企業統計が堅調だったこと、119円台の円安水準が見られたこと、そして更なる原油安が進んでいることなどが要因です。



言うまでもなくこの中で諸刃の剣になる可能性があるのは円安が行き過ぎた場合です。
企業が自社努力で吸収できないような円安は、輸入品の値段を上げて、国民の生活を直撃します。スーパーに行けば小麦粉や油の関連商品、乳製品からコーヒー豆まで、様々なものが既に値上がりしています。4月からの増税で約2%の物価上昇も加わっていますので、消費者にとってはボディーブローのように痛みが蓄積してきます。4~6と7~9月期のGDPマイナス成長はそれを明確に表したものです。



それに対してアベノミクスの思わぬ幸運が最近の原油安です。
製造加工や輸送などのコストが下がれば商品は値下がりますし、家庭でもガソリン代が安くなって可処分所得に余裕が生まれます。
しかし、長い目で見たら原油安によってもたらされるマイナス面も出てくる可能性があります。それは、安倍政権最大の目標であるデフレ脱却が遠のく可能性があるということです。来年までの「2%」を達成するために日銀がこれ以上の金融緩和を続けることになれば(株価には一見プラスかもしれませんが)、円安が更に進行し、出口戦略(金融引き締めをする時の影響)もかなり厳しくなってくるでしょう。
私は4年以上前からカンフル剤としての金融緩和は必要だと提言してきましたが、三本目の矢をないがしろにして一本目の矢ばかりに頼る経済政策には危機感を覚えています。カンフル剤を打ち続けたら効果は弱まりますし、副作用のほうが大きくなってしまうのです。
また、シェールガスへのシフトはあるものの、原油はOPECの減産や中東情勢によって急に変動することも想定されます。



さて、昨日は同時にムーディーズによる日本の格下げも話題になりました。
格下げの理由は増税を先送りしたことによって財政赤字削減の可能性が難しくなったこと、成長戦略の不確実性、そして日本国債の上昇リスクなどです。



「やはり増税先延ばしは失敗だった?」という論調が報道でも見受けられましたが、短絡的にならず、両面から見ないといけません。
企業に置き換えれば分かりやすいですが、収入を増やす手段は一つではありません。
値上げ(=増税)をしたことによって一瞬は売上げが伸びても、中長期的にお客様が離れて減ってしまえば元も子もありません。一番重要なのは企業努力で経費を減らし(=定数削減、無駄削減、バラマキ中止、社会保障改革、歳入庁設置など)、新商品を出すことによって(=規制改革、エネルギーなどの新産業強化)売上げを伸ばすことなのです。それが国の足腰を強くし、真の経済再生をもたらします。



格付け評価に右往左往したり、原油安などの外部環境に依存して一喜一憂したりするのではなく、冷静に今までの・そして今後の経済政策を考え、アベノミクスの行く末を見極めていく必要があるのです。