昨日から小渕大臣が辞意を固めたとの報道が流れ始めていますが、日本経済が安倍総理にとって厳しい状態が続いている時期に、重要政策である「女性の活躍」が出鼻をくじかれた形となり、今まで安泰だった政権がひとつのターニングポイントを迎えたのではないかと見ています。

私は今回のことで、自民党の統治システムの限界を感じました。

予期せぬ形で注目を浴びてしまった先日の経済産業委員会。私が新大臣の就任後初の委員会で元々最も聞きたかったのは、第一の質問として「質問通告」(閣僚などに対する質問の内容を前日までに伝えるという国会の申し合わせがあります)していた「大臣の思い」でした。

そこで「なぜ安倍総理があなたを経済産業大臣として指名したと思いますか?」と質問をしました。

それに対し、小渕大臣は「私自身は全く分かりません。」と答えられました。

以前ブログにも書いた通り(是非コチラもご覧ください!)、私は大臣には一定の専門性が必要だと思っています。
社長が真剣に行う業務の一つに人事があります。特に、会社が危機的状況にあればなおさらです。CFO・管理本部長には公認会計士や財務畑のプロ。CIOにはシステムエンジニアとして馴らしたプロ。経営企画本部長には企画のプロを他社からヘッドハントしてでも連れてくるでしょう。
日本はいま1000兆円を超える借金を抱え、売上・利益も全く伸びていない状況です。
そんな危機的状況にある中で、総理の最大の権限の一つである人事を、安倍首相は知識やノウハウ、そしてご自身がおっしゃる「岩盤規制に穴をあける」覚悟と行動力を持った人を適材適所にという観点では無く、相変わらず「年功序列制度」と「派閥制度」を維持するという目的で行われたのです。

第二次安倍内閣は2012年12月の組閣以降、一人の脱落者も出さず、大変順調に推移してきました(617日間の閣僚の交代がなかったというのは戦後最長となります)。
本来であれば、そのように鉄壁なチームをわざわざ解体し、リスクを伴う人事異動を断行する必要がそもそもあったのでしょうか?
民間企業や、目的・目標優先の団体や組織ならばなかったはずです。

しかし、自民党の統率力の根源になっているのが年功序列。「自分も再選を続けていればいつかは大臣になれる」という思いが規律をつくっているのです。
当選5回目、6回目のベテランたちが、「順番なんだから、俺たちをそろそろ大臣にしろ」と不満を噴出させそうな中では、人事に着手せざるを得ません。そして当選回数だけではなく、昔ほどではないと言われるものの、派閥や仲が良いグループの顔色も伺いながら決定しなくてはいけません。
更に、今改造内閣ではその中に「女性に活躍してもらう」というイメージアップ作戦を入れ込む必要がありました。
そのような無理な人事が、今回の問題を引き起こしてしまったと言っても過言ではないのです。

大臣には「自分の経歴や職務経験から言っても、誰よりも○○大臣として適任だと思います。そしてAとBを目標として設定し、必ず実現します!」と堂々と言える人になってもらうべきです。
少なくとも、総理が期待することを面接の上しっかりと候補者に伝え、それが出来るかどうかを確認してから判断するべき。
小渕さんの「私自身は全く分かりません」答弁は、そのようなプロセスをしっかりと経ていない証なのです。なぜ自分が指名されたか分からない大臣が選ばれて喜ぶのは、大臣をコントロールしたがっているお役人たちだけでしょう。

このような内向きの理由で人事を続ける古い政党には、本気の改革が出来るわけがなく、日本の未来は託せません。