先日、東京地裁で、Googleに対して検索結果の一部を削除するよう命じる決定が出されました。

これは、ある男性が自分の名前を検索すると犯罪に関与していることを疑わせる検索結果が表示されるため、その削除を求めたものです。東京地裁は男性の生活が脅かされることを認め、著しい損害を与えるおそれがある122件について削除を命じました。おそらく日本では初めての決定ではないかと言われています。

この事件で思い出したのが2013年の参議院選挙。
みんなの党の公認で出馬し、惜敗をした桐島ローランドさん。

当時「桐島ローランド」と検索すると「桐島ローランド 逮捕」と関連語が表示されるようになったのです。
勿論、ローランドさんに逮捕歴はありません。
色々と検索してみましたが、すべて「桐島ローランドが逮捕されたという噂がある」や、「桐島ローランドが逮捕との話があるが脱税が理由か?」と、何の根拠もない内容ばかり。誰かがネガティブキャンペーンで始めたものだったのかもしれませんが、結果的にそれを突き止める事はできませんでした。

プロバイダ責任制限法では、謂れのない誹謗中傷があった場合、プロバイダに発信者の情報の開示を求めることができますが、それでは不十分であることが再認識されました。根拠のない事を書いても、最後に「かも」や「?」を付ければ、悪意であっても打つ手がありません。また、発信者の情報が開示されても、その発信者一人ひとりに被害者が改めて誤った情報の削除を求めるのは大変な作業です。選挙期間中のインターネット解禁によって多くのプラスが生まれましたが、このようなマイナスの部分が多々出てきたのも事実です。特に選挙は短期決戦なので、対処される頃には情報が出回り、選挙も終わっているということもあるでしょう。

興味深いのは、今年5月に日本と同様の事件においてEUの判決で認められた「忘れられる権利」。これを受けて、各国のデータ保護機関が共同してワーキンググループを立ち上げ、Google、Microsoft、Yahoo!と削除要請に対するガイドラインを策定しています。
「忘れられる権利」とは、インターネット上で個人情報を公開された人が、ネット事業者にデータ削除を要求できる権利のこと。以前ならば時を経て忘れられるはずだった自分の過ちや情報もネットのなかでは簡単に消えないため、このような権利が真剣に議論されているのです。

さきほど謂れのない誹謗中傷については、特に選挙期間中はスピーディーに削除要請に対応して頂く必要があると書きましたが、反対に、政治家の過去の発言や主張してきた政策についてはしっかり残すべきだと思っています。
あまりにも風見鶏的な政治家が多いのが今の日本。例えば、選挙の時は地元でTPP絶対反対と叫んでいたにも関わらず、当選するとすぐに総理に嫌われないように「賛成」へ主張を変えた国会議員が如何に多いことか。このような嘘つき議員には次の選挙で鉄槌をくらわす為に、いつまでもその発言履歴などをしっかりとネット上で残すべきです(EUの「忘れられる権利」も、公人に関する情報の場合には削除請求が却下される場合があります)。
もし、自分の主張が変わったのであれば、有権者が納得するように説明責任を果たし、それもネット上に残せば良いのです。

色々複雑化してくる世の中ですが、人類の英知であるネットを使って多種多様で有用な使い方ができるように、我々は詳細にトライ&エラーを繰り返しながら一歩一歩前進して行かなくてはなりません。