バーガーキング(米国2位のハンバーガーチェーン:BK)がカナダのティムホートンズ(カナダ1位のコーヒー&ドーナッツチェーン:TH)を買収するにあたり、本社をカナダに移転するという話がアメリカで議論を巻き起こしています。
民主党の上院議員がプレスリリースで「消費者はバーガーキングをやめ、米国を見捨てていないウェンディーズやホワイト・キャッスルを選ぶべきだ」とプレスリリースまで発表をしてしまい、騒ぎは大きくなっているのです。

米国の法人税は日本と並んで高く(40%)、税負担を下げる為に他国へ移転する企業が近年急増しているのですが、ファイザーやウオールグリーンと同様に消費者に近く、「ザ・アメリカ」というイメージの会社なので、より注目を浴びる事になってしまったのでしょう(また、アメリカで最も尊敬されている投資家のウオーレン・バフェットが資金提供者なので、役者が揃ってしまった感もあります)。

しかし、買収サイドはBKですが、THとの売上を比較すると、BK 20% - TH 67% - International 13%となるため、決しておかしくはありません。また、実効税率の比較でも、ここ数年の両社は殆ど差がありません。節税効果を狙うのであれば、カナダと租税条約を結んだ国から得られる利益に対する非課税剰余金や外国税額控除にフォーカスしているのかもしれません。
しかし、それは国際情勢によっても変わりますし、細かい特例などの積み上げより、一番明確に見える「法人税の%」が最も重要だというのが私の変わらぬ考え方です。

他国移転で納税地変換を行う事を『タックス・インバージョン』と呼び、水面下で検討している企業はかなりの数に上ると言われています。そのような動きを察して、オバマ大統領は「非愛国的だ」と非難し、民主党を中心に更なる規制や課税ルールを設けようとしているようです。

グローバルな環境・競争の中で、経営者の頭になれば、移転を考えてしまうのは当たり前なのです。私も出馬の時から法人税減税を訴えてきましたが、それがやっと日本では少しずつ前に進んできている現状です(こちらをクリックしてご覧下さい)。むしろ移転の自由を奪うのは、非民主的だとさえ思えます。言葉でプレッシャーを与えたり、不買運動を煽ったりするのも、本質を見失っている証拠ではないでしょうか。オバマ大統領も選挙の時は幾度となく法人税減税を公言してきたのですから、そろそろそれを実行に移すべき時ではないかと思います。



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「先日、掲載して頂いた「経済界」(2014-6-24号) より(文-山田厚俊、イラスト-のり)」