「送電容量増やす工事に入札方式 東電、群馬県内で」(日経新聞7/25)



この見出しだけを読むと、東電が送電網の工事を入札で行うことで、建設コストを下げようとしているのかと思います。
しかし、中身を読んでいくと、そうではないことに気づきます。



「大規模太陽光発電所(メガソーラー)など新規参入の発電事業者が増えて送電容量が不足しており、接続を希望する事業者が工事費を応分負担する」…つまり、送電網に接続したい発電事業者が建設費用を負担するということなのです。



東電の説明は:
①群馬県北部エリアでは新エネルギーの発電量が増えるため、送電線がパンク寸前となっていて、このままでは電気が送れない、
②いまの東電のルールでは、送電容量を増やす工事の費用は発電事業者が負担することになっているが、それでは発電事業者はどれくらい負担するのか分からないため、事業の見通しを立てられない、
③そこで、入札をして、より高額の工事費用を出せる企業に負担してもらい、代わりに優先的に送電線に接続させることで、新規参入者に事業の計画が立てられるようにする。



つまり、より高額の工事費用を負担できる大企業や大規模な発電所ほど有利になり、それができない自然エネルギーベンチャーや小規模の発電所は参入が難しくなります。



今回は東京電力が新電力を対象にエリアを限って試験的に導入するとのことですが、その結果如何では全国に広がる可能性が十分にあります。



また、考えられるのは、この入札制度が法的分離後にも続けられた場合、送電事業者が行う入札に既存の電力会社を母体とする発電事業者が応札することです。
結局はホールディングカンパニーの中で回すか(お金に色は付けられません)、それ以上の額を提示できる大企業から吸い上げ、小規模の新規参入者は排除されるということになります。



法的分離が最終形となれば、このようなことが起きることが十分に予測されました。だからこそ、最終的には所有権分離まで行える可能性を整備しておく必要があると主張しているのです。



電力自由化を謳う電気事業法改正は、来年の通常国会が最終仕上げとなります。その前に、現行政策の問題点を再度徹底的に議論し、公正な競争への道筋を諦めずに作っていきたいと思います。