大阪大学病院が、細胞シートによる女児の心臓病(拡張型心筋症)治療に成功したとの発表を行いました。

今回発表された治療は、今年5月に左ふくらはぎの筋肉から採取した細胞を培養して細胞シートを作成し、6月18日にそれを手術によって心臓に移植したというもの。この治療を受けた女児は順調に回復し、今月中にも退院できる見通しとのことです。
全快したということではないようですので、これからもご家族と一緒に闘い続けなくてはいけませんが、ひとまずは心からお喜び申し上げたいと思います。

重い心臓病の患者に対する細胞シート移植は、成人では治療例がありますが、18歳未満では今回が初でした。
平成21年7月の臓器移植法の改正によって、日本国内でも小児患者への心臓移植が可能となりました。ですが、小児においては脳死下での臓器提供数はまだほとんどありません。
現在は、重い心臓病の場合の根本治療は心臓移植しかない中、小児患者は移植を期待できないという状況なのです。

しかし、細胞シートによる治療の成功は、そのような現状を打破する光明をもたらしてくれました。細胞シートは、患者自身の細胞を用いるためドナー不足や拒絶反応といった問題がなく、患部に貼るだけで治療ができるという優れものです。しかも、シートの作成に必要な期間は二週間程度です。それでいて、しっかりと病気の改善・治癒の効果が確認されています。
現在、細胞シートの臨床研究が行われているのは、心臓だけでなく、角膜や食道、軟骨、歯周の治療など多岐にわたります。それらの治療が確立・普及すれば、これまで難しかった様々な病気で症状の改善・治癒を期待できるようになります。細胞シートの持つ可能性には胸が膨らむばかりです。

私の弟が21歳で他界したのも、特発性の拡張型心筋症でした。
その時は日本では脳死も認められていませんでしたので、心臓移植を受けさせてあげる事も出来ませんでした。
今となっては、まだ実施例は少ないものの脳死移植も可能になり、そして細胞シートで患者さんに希望の光を与えられるようになっています。
医学の進歩は素晴らしいものです。このような分野にこそ日本の力を結集し、世界に貢献していくべきだと思います。