昨夜遅くに、目を疑うようなニュースがネット上で流れました。



マレーシア航空機の撃墜。
数か月前も、同社航空機が行方不明になったばかりです。





昨年末に、親ロ派のヤヌコビッチ政権がEUとの政治・貿易協定の調印を見送ったことに端を発するウクライナの動乱。2月に同大統領が政権を追われた後も、クリミア半島の帰属を巡りロシアが介入し、親ロ派と親欧州派との紛争はウクライナ東部にまで拡大しています。





その戦禍が、一般旅客機の撃墜にまで至ってしまったのです。





民間航空機が撃墜された事件は、過去にもいくつかあります。
私たち日本人が強く記憶しているものでは、1983年の大韓航空機撃墜事件ではないでしょうか。これは、ソ連の領空を侵犯してしまった大韓航空機が撃墜されたものです。





また、2001年10月には、黒海上空でシベリア航空の旅客機が墜落しています。これは、ロシア政府やアメリカ政府が、演習中のウクライナ軍のミサイルが誤射・命中したことが原因との見解を示しています(ウクライナは否定)。





現在のウクライナ上空は航空兵力による戦闘が行われている空域ですので、撃墜される危険性はあったといえます。しかし、ICAO(国際民間航空機関)は、ウクライナ東部上空の飛行回避勧告を出していませんでした。この部分のリスクマネージメントを今後明確にしなければなりません。





また、ウクライナ政府、ロシア政府・親ロ派は、お互いに相手が撃墜したと主張し、非難合戦になっています。もちろん、どちらが撃墜したのかを明らかにしなければなりません。





しかし、こんな状況下でこそ、自分達の争いに無関係な人々を巻き込んでしまったという事実を直視し、いまこそ停戦の動きを進めるべきです。日米欧としても、どちらが悪いという中傷合戦に乗るのではなく、その状況を招いてしまった両国に対して厳しい態度で臨むべきです。





また、私たち日本人も今回の衝撃的な事件を対岸の火事として見ることはできません。





昨年11月、中国は防空識別圏を尖閣諸島の上空を含む空域まで拡大しました。
防空識別圏は領空ではないため、その圏内を飛行していても、直ちに大韓航空機撃墜事件のように領空侵犯として撃墜されることはありません。しかし、空では今年5月の自衛隊機への中国軍機の異常接近、海では昨年1月の海自艦への射撃レーダーの照射など、中国軍の危険な行為が頻発しています。その理由の一つは中国共産党が軍をコントロールできていないという事実が背景にあります。





ウクライナでのマレーシア航空機の撃墜も、親ロ派が発射したミサイルによる可能性が高いとと指摘されています。それが事実だとすれば、1万メートルもの上空を飛ぶ旅客機を軍事作戦用の航空機と間違えたのではないかと推測されます。
統制力のある司令部から命令を受けるような状況であれば、このような事は起こらなかった筈です。





そう考えると、中国が尖閣諸島の領有権を主張している以上、現場の部隊が暴走し、日本の領空でも同様の事件が起きてしまう可能性はゼロとは言えません。





そのような事態を避ける為に、日本は今回の悲劇を機に、領土・領空についての状況をもう一度国際社会に発信して理解と支持を得なければなりません。同時に中国に対しては、防空識別圏を元に戻すよう強く迫る必要があります。





外交努力で無関係な市民が戦火に巻き込まれてしまう可能性を無くしていくことは、間違いなく政治の責任なのです。





この痛ましい事件で亡くなった乗員乗客の方々に心よりご冥福をお祈り申しあげます。