昨日、電力各社の株主総会が開催されました。
「原子力安全改革プランを着実に実施し、改革の加速化や安全文化の浸透を図ると同時に、柏崎刈羽原子力発電所における一層の安全性向上対策や運営面での改善に取り組んでいく」(東電)
「電力需要の安定化のために総力を結集し、原子力プラントの早期再稼働にむけた真摯な対応を積み重ねていく」(関電)
「今後とも、原子力発電所の早期の再稼働を目指し、玄海3、4号も含め、引き続き国の審査に全社を挙げて対応していく」(九電)
と、各社とも原発推進・再稼働に積極的な姿勢を示しています。



これに対し、各社の株主からは原発の廃炉や撤退を求める提案が相次ぎました。例えば、関西電力では定款に前文を新設し、その中に「原子力発電優先から地域分散型再生可能エネルギーを基軸とする安定経営をめざす」、東京電力では「原子力発電所を再稼働しないことを前提として総合特別事業計画を見直し、再提出する」、中部電力では「本会社は、安全第一を旨とし、世界一危険な地点に立地する浜岡原子力発電所を廃止する」等です。



また、経営陣の刷新を求める提案もありました。東京電力では脱原発派の取締役の選任、関西電力では、大株主である大阪市を代表して橋下市長が質問の冒頭で経営陣の退陣を求める、というものでした(残念ながら、舛添都知事は東電の総会に出席しませんでした)。



これらの株主提案はいずれも完全否決されてしまいましたが、私は評価されるべき提案だと思います。



東京電力に対する取締役選任の提案は、候補者はいずれも脱原発派の社外取締役でした。以前、その重要性をブログ でも取り上げましたが、社外取締役はその会社に染まらず、外部や株主の視点から適切なコーポレートガバナンスを行うことができます。正に現在の電力各社にも求められているものです。



東電は実質国有化されてから社外取締役の人数が増えましたが、例えば関西電力は17名の取締役のうち、社外取締役の数は3名に過ぎません。



やはり今後は社外役員の義務化、大会社の場合は一人と言わずに役員数の比率等に比例して複数人の任命を実現し、株主と共に客観的な提案が出来る体制を作っていく必要があります。
私も上場企業経営者として株主総会の経験がありますが、社外役員が多いと緊張感が高まって、より真剣に株主の声に耳を傾けるようになるのは間違いありません。
また、長期的な利益の観点からも、実際はコスト高で効率の悪い原発から撤退する議論が真剣にされるようになるはずです。


最近は総会開催日の分散化も進み、「株主重視」の姿勢を見せる企業も増えてきていますが、ポーズだけで終わっては意味がありません。
特に電力自由化も含め、大きな岐路に立つ電力会社は、より真剣に株主(=国民)の声を取り入れた経営を行っていく必要があります。