「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。」
昨日言い渡された福井地裁判決の主文です。



福島第一原発事故は、何万人単位で人々の生活を基盤から崩してしまい、まさに破壊的なものでした。3年以上経った今も事故は収束しておらず、多くの人々が避難生活を強いられています。日本国民は、二度とこのようなことが起こることがないよう、新しい未来をつくって行く必要があります。



しかし、4月11日に閣議決定された新エネルギー基本計画は、原発を重要なベースロード電源と位置づけ、核燃料サイクルを維持し、「もんじゅ」を温存するなど、新しい未来へ進もうという気概が感じられない内容でした。



みんなの党は、2020年代の原発ゼロに向けて様々な政策を訴えてきました。次のステップへ進む経過的な措置として、一時的な再稼働を100%否定しているわけではありませんが、本当に世界最高の安全基準を満し、40年ルールも徹底することが出来た場合の話です。



福井地裁の判決理由は
・原発の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである
・地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない
・本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である
・福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである
等と辛辣なものでした。



原発事故後3年が経過し、既にその問題を忘れ始めていた国民や政府関係者にとっては、胸に突き刺さるような言葉だったのではないでしょうか。
(そう感じないとしたら、よほど利権やしがらみにまみれている人なのでしょう)



今回の差止め判決を受けて、原子力規制委員会の田中委員長は、「司法の判断について、私の方から申し上げることはない。大飯については従来通り、我々は我々の考え方で適合性審査をしていく」と言っていますが、他と比べて最も中立である国家機関によって原発の安全性を否定されたという事実は重く受けとめるべきだと思います。



また、「裁判官は素人だから」と反論する人たちも出てきているようです。低俗な、司法を否定するような発言には反論する気持ちすら出てきませんが、敢えて言うならば、ベースは素人だからこそ双方の話を真っ白な状態で聞くことができ、しがらみなく、より公正な法的判断が下せるのです。



私は、国の方針に対して裁判所が真っ向から反対するというのはとても大変なことだと思っています。
現在のように1党が圧倒的多数を占め、原発推進を明確に打ち出しているという状況では尚更です。
そういう意味では、今回の樋口英明裁判長にとっても、勇気のいる決断だったと思います。



関西電力は大飯原発を再稼働させることが出来なければ、4期連続赤字が現実味を帯びるため控訴するとのことですが、黒字化の為に国民が望まないものを「原材料」に使い、商品として無理やり提供するということは本末転倒です。
(5月13日の経済産業委員会でも指摘しましたが、そもそも救済されている東電が1014億円の経常黒字(当期純利益は4386億円)で、賠償負担金を払っている関電やその他多くの電力会社が赤字だと言うのもおかしな話です。そのカラクリは明白ですが。)



今回は地裁での判決であり、大飯原発の差止めが確定したわけではありません。
2006年に志賀原発の運転差止めが命じられた事件で裁判長を務めた井戸謙一さんは「福島の原発事故を機に、原子力の安全性に対する司法判断は大きく変わると思っていた。今回の判決はそれが形になった第一弾といえる」
とのコメントを出しています。



今後の高裁での審理を見守っていきたいと思います。