昨日、集団的自衛権等の検討をしてきた安保法制懇(「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」)の報告を受けて、安倍首相の記者会見が行われました。演説で2枚のパネルを使ったことがとても印象的でした。



私も、「国民にとってわかりやすい政治を心がける」という意味も込めて、国会質疑でパネルを使うことがありますが、スペースの制約上言いたいことのすべてを盛り込むことは難しく、どうしても取捨選択せざるをえません(見る人を誤導しないよう作成の際は注意をしています)。


意図的かどうかは別として、官僚の作る「ポンチ絵」(法案や政策を一枚紙で矢印や図を使って説明したもの)では、肝心な部分の説明が省かれている場合があり、法案を読み込んでいて驚くこともあります。また、抽象化の程度や使用する写真等によって印象操作が行われるおそれもあります。

こういった危険性があるものの、私個人はパネルや図解といった方法に賛成です。作成者が何を主張したいのか、どのようなビジョン・将来像を持っているのか、 そのポイントが伝わりますし、何より複雑な法案や政策であればあるほど、国民に興味をもってもらう「きっかけ」となりうるからです。

今回の安倍総理のパネルも慎重に検証する必要はありますが、記者会見の中継で見た限りでは、そこまで極端なものではなかったように思います。

むしろ、解釈改憲をめぐる議論の中で極端さが目立っているのは各種メディアの世論調査だと思います。主要紙に限っても、調査結果が新聞によってかなり差があり、見出しだけ見ると違う国で統計をとったのではないかとさえ思いたくなります。



例えば、読売や産経では7割以上が集団的自衛権の行使容認となっているのに対し、朝日では反対が約6割となっていたり、日経や東京新聞では反対が5割となっていて、てんでばらばらです。



質問の内容や方法、回答の解釈によって違いが出るのは明らかで、そこに恣意性を介在させることも可能です。新聞を複数取って比較する人はそれほど多くない以上、各紙の思惑が入った世論調査は読者を誤導する危険性が極めて高いと言わざるを得ません。このようなやり方を続ければ、国民からの信用は失われてしまいます。

報道機関に求められるのは、集団的自衛権あるいは解釈改憲について他国ではどうなっているのか、一部の国だけではなく主要国が日本の解釈改憲についてどう考えているのか、仮に集団的自衛権の行使が認められるならばどのような注意(法律上の制約)が必要なのか等を報じ、国民に考える材料を提供することであるはずです。不偏不党を標榜するならば、各社はもう少し自制心を持つべきではないでしょうか。


皆さんも、今回のような重要案件では、ネットなどで様々な情報を比較検証して頂ければと思います。