日本で通常言われる社内取締役(常勤取締役)とは、社長や財務本部長など、社内で業務執行の責任を担っている人がつくポジションです。社内昇格をしてきたような人材がほとんどで(最近はヘッドハントも増えていますが)、他の取締役や取引先との関係など、しがらみや利害関係のある場合が多いといえます。



それに対して社外取締役は、その会社の業務には精通していないかもしれませんが、経営全般に関する知識を持ち、あるいは法律や会計の専門家として、利益相反の監督機能や経営の公平性を向上させる役割を担います。



さて、上場しているような企業であれば、株主に透明性をもたらす観点からも、社外取締役は何人かが任命されているだろうと皆さんは思うのではないでしょうか。



因みに、米国やカナダの上場企業は全て過半数が社外役員によって構成されていますし、欧州でも当局の規則によって半数以上を社外取締役にすることを遵守するよう求められています。香港では上場規則で3人かつ1/3以上が求められており、韓国でも一定規模以上の会社は3人もしくは1/2以上となっています。





「昨日は会社法改正法案の発議者として法務委員会で答弁しました」







「行田さんから5問の質問がありました」




日本の会社法では原則的には社外取締役を置く必要はありません。現状では東証の上場企業(1部~マザーズ)で社外取締役を1名以上選任しているのは54.2%でしかありません。つまり、約半分の会社が、社外取締役が一人もいないという状態です。そして、1部上場企業に限ってみても、62.3%に留まっているのです(その半分は1名しか任命していません)。



これでは、株主重視の姿勢が見えず、内外の投資家は心配で株を買えないということになってしまいます。



私は、社会的責任の大きい会社に社外取締役が増えれば、会社のステークホールダーにとっても、日本全体にとっても、プラス効果が大きいと思っています。
例えば会社の社員にとっては、経営方針の透明化が進み、より自社の事を理解できるようになります。会社の債権者(銀行や取引先)にとっても経営内容がより開示されることで、与信判断がしやすくなります。
そして、会社の利益優先体質が強すぎたとしたら、それを是正して、安全重視やリスクマネージメントを取り入れ、お客様や消費者の安心安全を向上することもできます(鉄道会社やバス会社などで起こる事故も防げる可能性が高まります)。



また、日本の企業の現預金残高は合計225兆円以上にもなると言われていますが、社外役員の存在によって、内部留保や配当金に対する意識も変わってくると思います。
内部留保を増やそうと言う考えから、積極的な投資に回そうという考えに変わり、設備投資や人材に対する投資も増えてきます。
また、利益を配当に回す機運も高まるため、株価を押し上げる効果が出てきます。
外国人投資家は日本企業のガバナンスとディスクロージャーのレベルに非常に不満を持っていますので、改善が進むことで市場に与えるインパクトは計り知れません。






私も、会社をIPO(上場)したり、MBO(経営陣買収)したりの経験がありますが、社外取締役の数を少しずつ増やして、最終的には過半数としていました(約10年前です)。
それによって、執行役員にとっては耳の痛い話が増えたり、厳しい経営判断を求められたりもしましたが、振り返ってみると、株主を守ると言う意味においては正しい決断をすることが出来たのではないかと考えています。



今回、民主党と共同提出をすることにより、実現をしたいと思っているのは社外取締役1名の義務化です。本当は他の先進諸国のように複数名の義務化をしたいのですが、ファーストステップとして、まずは1名から始めようとしているのです。しかし、そのたった1名も、残念ながら、経団連や日本商工会議所などの団体をバックにした自民党によって反対されています。
多くの当事者(経営者)自身が「義務化をしたほうが良い」と思っているにも関わらず、組織的なしがらみによって進まないもどかしさがここにもあります。
諦めずに、実現するまで取り組んでいきたいと思います。