マイアミ・ドルフィンズと言えば、アメリカ人なら誰でも知っているアメフトの名門。
最近は優勝から遠ざかっていますが、私がアメリカに住んでいた頃は殿堂入りしたダン・マリーノQBの元、ワシントン・レッドスキンズと人気を二分するようなチームでした。


今回、黒人のチームメイトであるマーティン選手を執拗にいじめていたとして、無期限の出場停止処分を受けたインコグニート選手。調査が進められた結果、他にも2人の被害者がいて、その内の一人が日本人のアシスタント・トレーナー(N.イノウエさん)だったことが分かりました。


アシスタントトレーナーという職種上、選手の為に頑張りたいと思って入団したはずですから、ジャップと人種差別を受けたり、家族を侮辱されたりしたのは大変悔しかったでしょうし、怖かったことだろうと思います。


私も高校時代、アメフト部員から人種差別のターゲットになったことがありました。
強くならないと一方的にやられると思って体を鍛え始め、140Kgのベンチプレスが出来るようになり、「ジャパニーズ ターミネーター」とあだ名がつくようになりました。その結果ターゲットから外され、ホッとしたのを覚えています。しかし、それまでの1年間は部活でロッカールームへ行くのが恐怖でした。


初の黒人メジャーリーガーであるジャッキーロビンソンの映画「42」を観て感動した人は多いと思いますが(私も感動しました)、表向きの人種差別はなくなってきたものの、まだまだ人目の付かない所で根深く残っているのが実態であり、今回の事件はその一端が露呈したに過ぎないと思っています。


日本でも、パワハラ問題など、「大人」のいじめが取り上げられるようになってきましたが、職場でのいじめは、生活がかかっているだけに深刻な問題となり得ます。「逃げる」という解決策は難しく、本人が独力で戦うことも容易ではありません。とすると、一番の解決策は本人だけでなく周囲の人が告発をする事ではないでしょうか。それも、エスカレートしてでは無く、問題を認識したら素早く出してしまう方が良いでしょう。それが、関係各人の傷を少なくする最良の方法だと思います。


そして、組織マネジメント側は、そのような告発が出てきた時にしっかり対応できるよう、現在の「行動規範」や「パワハラ・セクハラ対策」に加え、「同僚からのいじめ」に対する体制を整えておく必要があります。たとえば、相談窓口の設置、同僚からのいじめも職場全体の問題であることの周知徹底・教育、守秘義務、懲戒規定の整備等です。会社には社員が快適に働けるように職場を管理する義務(環境配慮義務)があり、果たさなければ法的責任が生じ得ることも認識すべきでしょう。


アメリカのアスリートたちの頂点と言われるNFL。大変名誉があり、平均年棒も約2億円と高額です。
それだけの地位を築いた中でも起きてしまういじめ。つまり、どこの世界でも起こりうるのです。
「まさか、わが社で」は言い訳にはなりません。