NHK会長や経営委員たちの発言が、問題視されています。



NHK経営委員会とは、NHKの経営に関する基本方針や内部統制、番組編集の基本計画などを決定したり、役員の職務執行を監督したりする機関。この経営委員会がNHK会長を選出するという仕組みになっています。会社でいうと、経営委員会は取締役会に相当し、経営委員とは取締役、会長は最高執行責任者に相当します。最高責任者や取締役の発言は、その会社の考えと捉えるのが普通でしょう。



籾井会長は就任会見で、「会長の職はさておき」と前置きはしながらも「この問題はどこの国にもあった」「韓国は国際的に解決していることを、なぜ蒸し返すのか」と発言。記者から就任記者会見の場であることを指摘されると、「失礼しました。じゃあ、全部取り消します」と一転して発言を取り消しました。



また、長谷川委員は、朝日新聞社前で拳銃自殺をした右翼団体活動家について、「神にその死をささげた」などと賛美するような追悼文を文集に寄稿していたことが発覚しました。これに対して「個人的な思想信条を表明しただけであり、経営委員としてのルールは守っている」という趣旨のコメントをしています。



百田委員は、都知事選の候補者の応援演説で(自分が応援する以外の主要な候補者に対して)「人間のクズ」などと発言しました。百田委員も、「放送法では、放送に関しては不偏不党・中立を求めているが、プライベートまでを縛るものではない」とコメントしています。



皆さんが、冷静に(バイアスなしで)このような話を聞ける方だとしたら、上記の発言を聞いて、どう思われたでしょうか?
予算委員会でこの問題について問われた安倍総理は「私は聞いていないんですから、答えようがない」の一辺倒でした。



因みに、この問題に対する海外の反応は、お世辞にも良いものとは言えません。
中国や韓国は言わずもがな、FINANCIAL TIMES(2014.2.4)の記事は「安倍首相の干渉がNHK報道をくもらせている」という見出しから始まります。
BBC(2014.2.4)では百田委員の南京事件に関するコメントも取り上げて、最後は「China says up to 300,000 civilians and soldiers died in Nanjing over the winter of 1937-38 after the Japanese military entered the city…」という文面で締めくくっています。つまり、中国側の見解を広めてしまっている形になってしまっているのです。



これは、私が安倍総理のホームページに関して「あえて自分からマイナスイメージを作りに行かなくても良い 」と提起した問題と同根をなします。



今の流れでは、安倍総理やNHK経営陣による各種発言が、現政府の考え方であることは当たり前、日本人の思いとして海外に伝えられてしまう傾向にあります。「本質的な議論」を遠ざけてしまう余計なイメージを、あえて醸成するメリットがあるのでしょうか。私は以前からCollective Defenseの必要性を主張してきましたが、作られてしまったネガティブな印象は、集団的自衛権をめぐる方向性などにも影響を与えかねないのです。



繰り返しになりますが、考え方が其々あるのは仕方がありません。しかし、状況や自分の立場も考えず、公の場で余りにも過激な発言を平気でしてしまうような経営者が客観的にみて不適切であることは素直に認め、バッター交代も含めて検討するべきだと思います。



最近の政権運営を見ていると「どうせ国民は喉元過ぎれば熱さ忘れる」と、やっかいな問題が出てきたら、隠れたり、無視したり、塞いだりという形で乗り切ろうという姿勢が垣間見えますが、その方策は問題が本当に消えるわけではありません。取り返しのつかない爆発を招く可能性のあるマグマが、国内でも海外でも少しずつ増えているということを安倍政権は認識するべきです。