昨日はカンファレンス・ルームに缶詰になって列国議会同盟(IPU)と閣僚及びWTO上級職員との政策会議が行われました。



IPUの日本参議院代表として参加させて頂いている私は、スピーチの中で:



「I believe many of you enjoy soccer, and I would like to share with you what we in Japan call the “Doha’s Tragedy”. In 1993, the Japanese national soccer team was very close to winning the tournament to participate in the World Cup for the first time・・・」



と、日本では誰もが知っている「ドーハの悲劇」について触れさせて頂きました。



おさらいですが、WTO協定は「すべての加盟国との間」で関税を下げたり、手続を統一化したりすることで、貿易を円滑にするルールを決めるものです。現在は、2001年に始まった「ドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド)」の最終局面に入っています。



一方、FTAや広域経済連携(TPP、RCEP等)は、「特定の国や地域の間だけ」で貿易の自由化を進めるものです。

FTAやTPPの方がより踏み込んだ深い協定を結ぶのに対して、WTOはより基本的な内容を模索します。しかし、加盟国が159か国もあるため、その合意形成には想像を絶するほどの大きな労力が必要です。



特に問題なのは、先進国と開発途上国の対立。例えば先進国が「税関手続きが国によって違い、複雑なのは貿易を妨げる。よって事務を簡素化し、共通の通関時間を設定しよう」と一般的に良さそうに聞こえる提案をしても、開発途上国からすると「誰がそのコストを持つのだ?我が国には、そんな金も、IT技術も、人材もいない。我々にはマイナスでしかない」という話になってしまいます。



実際、いまギリギリの交渉で達成しようとしている3つのパッケージの内、一番問題になっているのが農業の食糧備蓄制度です。WTOでは補助金の低減を推進し、市場価格と公的価格のかい離を一定以上は認めていません。よって、国が補助金で農作物を買い集めることを協定違反と見なすのですが、今回はインドがそれに反対をしています。
インドの言い分は「買い上げて貧困層に配る為に必要」ですが、実際は来年に控えた選挙対策の側面もありそうです。



本日の会議ではインドの代表も登壇をする予定でしたが、結局は姿を現しませんでした。
それを知って、一部のマスコミは悲観的な見方をしていましたが、私はインド人と様々な交渉をしてきた経験から、これはネゴ手法の一つにしか過ぎないと思っています。まだ残り3日間もありますので、粘り強く交渉を続ければ、どこかに妥協点があるはずです。



とにかく成功の鍵は、各国が自国の利益だけでなく、この世界的な取り組みに意義を見出せるか。
そして10年間の交渉を無に帰することの歴史的な損失を認識して、政治的決断をできるかに掛かっています。



私のスピーチは:



「WTOが折角ここまで来たのに、最後に何も達成できず閉会してしまえば、もう一つの「ドーハの悲劇」になってしまう。今回は日本VS他国の話しではありません。我々の国(159か国)全てが同じチームでプレイしなくてはいけません。より良い世界の為に力を合わせて勝利を掴もうではありませんか!」



で締めくくらせて頂きました。



12月3日から開かれるWTO閣僚会議では、IPUの討議内容も反映されるとのこと。
諦めずに一筋の光を探していきたいと思います。




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