今日は特定秘密保護法案について。


最初にお伝えしたいのは、世界各地で育ち、事業をしてきた私の経験からすると、日本(人)の情報に対する意識は他の先進諸国よりも低いということです。銀行員だった時も、上場会社の社長だった時も、政治家の今も、常に感じてきました。それを我々はまず認識しないといけません。


例えば米国では、1996年に経済スパイ法が制定されました。企業秘密を外国政府に流すと、最高15年の禁固刑が科されます。このような重罰規定を置いているのは、民間であっても守秘義務の重要性が認識されているから。国民の生命を預かる国家の機密であればなおのことです。


テクノロジーの進化によって情報の管理が更に複雑化するなか、日本にも情報漏えい対策が必要なのは間違いありません。難しいのは、憲法21条1項で保障された国民の知る権利とのバランスですが、外交防衛上の核となる秘密を(秘匿性が極めて高い期間中に)知る権利は憲法保障の対象外でしょう。


そこで、みんなの党はかねてから日本版NSCや機密情報漏洩防止策の必要性について訴えてきました。今年の参院選のアジェンダにも「安全保障会議の事務局機能の強化(日本版NSC)」「政府全体の情報収集能力、情報漏洩防止策を強化」が明記されています。


これは、混迷を極める世界情勢の中で、国民を守るべく、戦略的な外交展開する体制を構築すると共に、国家としての信頼性を高めるためです。たとえば、イージス艦の図面が漏れてしまったら、あるいは、北朝鮮のミサイル攻撃に対する日米の共同防衛策の内容が漏れてしまったら、外交上日本がどれほどの危機に立たされるかは、ご理解いただけるのではないかと思います。


もちろん、国家機密の漏洩防止という建前のもと、政府にとって都合の悪い情報が隠ぺいされるという事態は防がなければなりません。政府の原案は、秘密の範囲が際限なく広がる可能性があり、極めて危険なものでした。


これに対し、単純に「反対!」とNOを突きつけるのも一つの方法です。ですが、最近の自公政権の動向をみれば、それは決して良い結果を生み出さないと私たちは考えました。


先日の社会保障プログラム法案の強行採決もそうでしたが、ねじれ解消後の与党の専横ぶりは悪化するばかりです。私は現在、国会対策委員長代理(参院)という仕事もさせて頂いています。外からは見えづらいところ、例えば議運の場での強行採決などがどんどん増えていく姿も目の当たりにしています。特定秘密保護法案も、仮に全野党が反対に回ったとしても、自公が強行採決に突き進んだのは間違いないでしょう。


それだけは何としても阻止しなければなりませんでした。秘密の範囲の限定と、省庁の恣意性を排除するための内閣による情報管理などを最終防衛ラインとして交渉する。これが議論の末、みんなの党が出した結論です。


その結果、100%とまではいかないものの、秘密の対象となる事項の限定と総理大臣の関与強化の譲歩を引き出すことができました。


ご指摘があるとおり、より望ましいと言える「第三者機関」と「総理大臣」は違います。しかし、総理大臣は国民が政治の最終決定を行う過程で政党を選び、その政党が国会に於いて選んだ存在です。従って国民の意思により政権が変われば、それまでの内容を洗いざらいチェックすることが出来ます。それが恣意的な秘密の指定を抑制していくことになります。


「反対するべきだ!」という声が多く寄せられますが、交渉の余地なしとし、単純に反対という姿勢だけで臨んでいたならば、このような修正に漕ぎつけることは無かったでしょう。それは国民がより大きな危険に晒されるという状況に至ったはずです。高い危機意識を持ったからこそ、我々はあえて修正していくというオプションを選んだのです。


「修正案においても法案の危険性は排除しきれていない」
それは我々も全く同意見です。残された今後の国会審議において更なる追及をしていきたいと思いますし、法案が成立したとしても、それを更に改善するためにしっかり監視していきます。そして、改正案の提出を含めた議論を党内・国会内、そして国民の皆様と引き続き行っていかなければならないと思っています。