皆さんもTVや広告で見聞きしたことがあると思いますが、NISA(ニーサ)が2014年1月から始まります。
まだご存知ない方に簡単に説明しますと、NISAとは、毎年100万円までの投資に対して適用される個人投資家の為の新しい税制優遇制度(少額投資非課税制度)です。



現在の優遇制度(10%軽減税率)が2013年末に終了すると、2014年からは株式投信や上場株式の売買益や分配・配当金などに対する税率が20%に戻されます。しかし、NISA口座で購入すれば、売買益や分配・配当金は非課税になるのです。



イギリス人口の約4割が開設しているというIndividual Savings Account (個人貯蓄口座)をお手本にした制度で、日本=Nipponで、ISAを普及定着させたいという趣旨から「NISA(ニーサ)」と名付けられました。



その口座開設が大人気で、開設申請が始まった初日だけで358万件の申し込みがあったそうです。
一方で「1人1口座」という決まりを知らない個人投資家による重複申請が相次ぎ、その数は数十万件。それを解消し、一つの金融機関を選ばなければこの制度は利用できません。



国税庁では重複の洗い出しに大わらわで、休む暇もないとのこと。
消えた年金も事務作業のミスが原因ですので、ぜひ職員の皆さんにはしっかりとした対応をお願いしたいと思います。



しかし、「連日の作業ご苦労様!」と思う反面、昔から同じようなことの繰り返しだなーと思わざるを得ない部分もあります。



NISAが生まれた理由は、現金や預金として滞留する個人金融資産を投資に誘導するため。現政権もこのスタートダッシュによって株価の上昇を期待している筈です。
(日本人の個人金融資産は約1600兆円と言われていますが、その半分以上は現預金。株式や出資金の比率は約12%。それに対して米国は約43%です。)



「NISAは成功だ!」というイメージ作りも行いたい政府の思惑で、金融庁からは各金融機関に相当のノルマが課せられたのではないでしょうか。私も経験したことがありますが、そのノルマ達成の為に支店の営業マンたちが必死に走り回ったことでしょう。そして、ノルマ達成を優先し、複数の証券会社や銀行などで既にNISA口座を持っているか否かの確認を怠っている姿も容易に想像できます。とにかく「申込件数」を稼ぎたいので、気にしている場合じゃないと考えてしまうのでしょう。



つまり、政府の思惑→金融機関へのプレッシャー→重複口座の大量発生→政府の作業増加→人件費の増加という悪循環を官僚が自分たちで作ってしまっているのです。



金融機関にとっても、新たなシステムを起動させ、顧客獲得の為に莫大な広告キャンペーンを打ち出し、営業マンを走らせ、作ってもらえるのは管理費の方が掛かる0円口座ばかり。費用の持ち出しはかなりのものです。そして、個人投資家が毎年50万円ずつ投資し、10年間持ち続けても、得られるのは数千円程度の手数料だけ。それだけを考えると割の良い商売ではありません(勿論、その先に更なるビジネスチャンスはあります)。



昔から続く、政府と金融機関の非効率な関係。
お互いもっとドライに取り組んだ方が、より良い商品やシステムが生まれるようになると思ってしまうのは私だけでは無い筈です。