衆議院小選挙区の定数を「0増5減」するための区割り法案が、19日に衆議院の政治倫理・公選法改正特別委員会で可決されました。みんなの党、共産党を除く野党が審議を拒否したままでの強行採決でした。

そもそも「0増5減」法案は昨年の解散前に通過したはずでは?こう思われた方も多いのではないかと思います。

昨年通過した法案では、福井、山梨、徳島、高知、佐賀の定数を1減らすというところまでしか決められておらず、具体的な区割り(どこからどこが選挙区か線を引くこと)が間に合いませんでした。線引きをどこにするかは、選挙区画定審議会の勧告を受けて、政府が公職選挙法の改正案を提出することになっています。この審議会の勧告が発表されたのが今年の3月28日。一票の格差を1.998倍にするという区割り案でした。

ところが、1.998倍でも不十分なのですが、この区割り案だと実は2倍以上の格差が生じる選挙区があることが判明しました。これは、審議会の勧告が、2010年の国勢調査に基づいて行われ、その後の人口変動が考慮されていないためです。

また、そもそもなぜ1.998倍という2倍ギリギリの数字なのかというと、一票の格差を測るうえで基準となっている(つまり人口が一番少ない)鳥取県の定数を「2人」として維持したままの区割り案となっているためです(ちなみに鳥取県には石破幹事長の選挙区があります)。

しかし、政府は、躊躇なく2倍以上の格差を生じさせる区割り法案を提出してきました。この間、違憲無効の高裁判決が出ているにもかかわらずです。昨年の法案はあくまで選挙直前の緊急避難的なもの。改めて格差を是正するための法案を提出すべきです。

みんなの党は、一票の格差を民主主義の根幹にかかわる問題だと主張し、一票の格差を0にするため、党利党略を抜きにして、「全国集計比例代表制」を訴えてきました。政府のこのような態度を是認できるはずがありません。
(因みにみんなの党は「一票の格差」よりも問題点をよりクリアに伝えるために「一人一票」の実現とも訴えています)

他の野党も今回の法案には反対していますが、中でも民主党は、昨年解散の条件として、定数削減を含めた選挙制度の抜本見直しについて通常国会で結論を出すと自公と合意した手前「0増5減」の先行には納得がいかないでしょう。

確かに、最高裁の違憲無効判決さえ避けられるようにしておけば、残りの選挙制度改革については、「与野党で意見が一致しなかった」といってなし崩し的に会期末を迎えることができます。そうすると、国会議員は殆ど身を切ることなく次の選挙を迎えることができます。

自公が過半数を持たない参議院では、今回の法案が否決される可能性が高いのですが、衆議院で3分の2の議席を占める与党は、再可決で通過させる姿勢でしょう。また、参議院で60日以内に採決がされない場合、否決したものとみなされます。会期末は6月26日。与党が衆議院での採決を急いでいるのは、会期末までに再可決を間に合わせるためという理由もあります。

今回の与党の国会対応には、参院選まではアベノミクスという隠れ蓑の中でやり過ごし、既得権益型に先祖返りしたいという彼らの本質の一端が表れたというべきでしょう。

もちろん、みんなの党は、このような横暴を許しません。全国集計比例代表制では他の野党との連携が困難だというのであれば、まずは「18増23減」を主張していきたいと思います。これによって、都道府県間の格差は1.64倍まで抑えることができます。また、審議拒否という消極的な態度ではなく、金曜日の衆議院の委員会審議と同様、堂々と応じ(民主・維新などは欠席)、法案の問題点を国会の場でしっかりと指摘していきます。

そして、政府・与党のこれ以上の増長を防がなければなりません。そのためには、参議院は自民単独過半数を阻止する必要があります。衆議院で与党が3分の2を占める以上は「再可決」という伝家の宝刀を持つことになりますが、何度も今回のように強引に抜けば、国民に化けの皮をはがされることになるでしょう。その為には参議院に論戦の余地を残し、情報を発信できるようにしておかなくてはいけません。正に参院選は、今後の日本の「良識」を決める選挙となるのです。