10日に発射されるといわれていた北朝鮮のミサイルですが、13日時点でも発射は確認されていません。いつ実行に移るのかわからないこの状況は、極めてストレスフルですが、こういう時こそ冷静にならなければなりません。


北朝鮮の外交スタイルは瀬戸際外交。挑発を繰り返すことでアメリカなどとの交渉を有利に進めることを目的としています。


今回と似たようなことは2009年にもありました。4月にミサイルを発射、5月に核実験を実施、7月には再び複数発の弾道ミサイルを発射しています。その後2010年には3月に韓国哨戒艦沈没事件、11月に韓国延坪島砲撃事件と立て続けに挑発的な事件を起こしました。


しかし、その後対話路線に転じ、2012年2月にアメリカが食糧支援を行うことと引換えに、北朝鮮が弾道ミサイル発射、核実験及びウラン濃縮活動の一時停止及び IAEA 査察官の復帰を受け入れることなどを柱とする合意が成立しました(ただし、その直後に北朝鮮がロケット発射を予告したため、食糧支援は見送られました)。


今回も以上のような交渉のための行動と見るのが妥当でしょう。実際、11日に韓国の朴大統領が北朝鮮との対話に臨む意向を表明しており、発射をちらつかせるだけで北朝鮮側は一定の成果を上げたことになります。


このように、これまでの経過をきちんと振り返り、今回の挑発が持つ意味を分析することが必要です。


日本政府としても、安易な妥協をしないことが大切です。そして、その上でいかに国際社会と連携していくかを考えなければなりません。 (2013年3月27日ブログ 「北朝鮮への制裁」)


特に北朝鮮の貿易額の約50%を占める中国。同国としても、北朝鮮が挑発的な行為をとることで、近隣国が防衛力増強を図ることは不快なはずです。その意味では、日本やアメリカにとって「対話」の相手は中国といえるかもしれません。


と同時に、北朝鮮が実際にミサイルを発射すれば、中国は日本や韓国の(想定)核兵器に対する迎撃力を確認することが出来てしまいます。 日本が過去のような対応を繰り返してしまったら、それに付け込まれて、安全保障情勢は更に悪化してしまうでしょう。 ( 2013年 4月13日 ブログ 北朝鮮ミサイルも失敗だが、日本の危機管理体制も失敗」 )


外交は難しく捉われがちですが、基本は普通の人間関係と同じだと思います。
皆さんの家の隣人が貧しい日常生活を送っていて(その割には高級品も持っていて)、少しおかしな人で、常に物乞いをしてくる。意に反すると威嚇してきたり、威嚇のための武器をこれ見よがしに作り始めたり、唯一の味方であるこれまた隣人の親戚に協力を求めたりする。
もしくは、会社での席がおかしな同僚の隣になってしまい、常に問題を起こしてきたり、色んな嫌がらせを仕掛けてきたりする。隙を見せると、更につけ込んでくる。


そんな状況では、カッとしたほうが負けですね。問題に直面した時こそ、クールダウンし、大局的・戦略的に物事を考えることが必要となります。
国の場合は引っ越すわけにも、会社を辞めるわけにもいかないのです。
最良の方法は同じ常識を持つ隣人や同僚を味方につけて、共に中長期的ビジョンを共有し、対抗して行くこと他ありません。


残念ながら今までの日本外交は長期ビジョンを他国と共有することに欠けてきました。そういう意味でも、TPPやFTA・EPAは重要になってくると思います。民主主義や人権などの普遍的価値を共有する仲間たちとしっかり手を組んで、長期的におかしな隣人の「頭」を変えていくしかありません。