公選法が抱える問題は、ネット選挙運動に関するものだけではありません。選挙事務所に来てくれた人にお茶を出すのはOKだけど、コーヒーを出すのはNG。しかも、お茶もペットボトルで出すとNGです。ウグイス嬢に報酬を払うのはOKだけど、チラシを配ってくれる人に報酬を払うのはNG。選挙期間中、午後8時以降に街頭演説を行うのはNGだけど、駅前で「おかえりなさい」「お疲れ様です」とあいさつするのはOK。などなど公選法にはおかしなところがたくさんあります。


そして、これらの中には公選法を一読するだけでは結論が出ず、解釈が必要な規定が多々あり、広大なグレーゾーンが広がっています。私も、自分の選挙の時、そして、前回の衆院選の時に、この法律に散々頭を悩まされてきました。調べてもよくわからない点が出てくる度に、公職選挙法を所管する総務省や選管に問い合わせるのですが、最終的には「具体的な事案については司法が判断するので・・・」と明確な回答を得ることができませんでした。


この分かりにくい状況を何とかできないか、ある活動が公選法に違反するかどうか総務省のきちんとした見解を得られるようにできないか、と色々な制度を調べてみたところ、ノーアクションレター制度に行きつきました。ノーアクションレター制度というのは、企業が事業を始めようとする時に、その事業がある法律の規制に反しないか、その法律を所管する省庁に照会することができるという制度です。


選挙運動についてもこの制度が利用できれば、法律違反なのではないかと不安に思いながら活動する必要がなくなります。ですが、現在この制度の対象法令に公職選挙法は含まれていません。先日、ぜひとも対象法令に入れてほしいという思いを込めて、なぜ公選法がノーアクションレター制度の対象になっていないのかを、「質問主意書」で政府に尋ねてみました。


昨日政府からの答弁書が届き確認したところ、対象法令にしていない理由の一つとして「事前確認手続の制度(ノーアクションレター制度のことです)に基づき、極めて短期間に回答を行うことは物理的に困難であり、選挙の適正な管理執行に支障を来すことが懸念される」ことが挙げられていました。


確かに、同制度は照会を受けてから30日以内に回答すれば良いことになっているので、照会から30日後に回答が来たのでは、選挙が終わってしまっているというケースもあるでしょう。しかし、公職選挙法が「解釈」を必要としない国民にとって(そして回答者である総務省にとって)わかりやすい法律であるのならば、回答まで30日も必要ないはずです。「短期間に回答を行うことは物理的に困難」というのは、裏を返せば所管省庁である総務省にとってもわかりにくい法律ですよと自ら認めているようなものです。そのようなわかりにくい法律があるために国民の活動は委縮せざるを得ませんし、総務省としても、選挙の度に多くの候補者やスタッフから問い合わせが殺到し、毎回「個別具体的な事案については司法が判断するので・・・」とオウム返ししなければならないのは煩雑なはずです。


私は国民がもっとオープンかつ積極的に政治や選挙に参加し、立候補への障壁を下げるためにも、今回のネット選挙運動解禁の流れを公職選挙法自体を見直す動きに繋げて行きたいと思っています。