妻との約束
抗がん剤の副作用での悩みも薄らいできた年末に、私の好きな場所に一緒についてきて欲しいと、お願いされます。
しかたなく、10回だけ一緒にでかける約束をしました。
輪袈裟(わげさ)と念珠(ねんじゅ)を持って、1時間程度の話を聞くだけですが、なぜか素直に聞いていられます。
また、小さな子どもたちも多く、その子どもたちも静かにしているのが不思議にみえました。
「涅槃会の こころに沁みる 講話かな」 涅槃会(ねはんえ:釈迦が亡くなった2月15日頃)
場所は車で30分程度の、三宮かポートアイランドのどちらかでした。
その帰り道、二人で何かを食べて帰るようになっていきます。
その食事での思い出は、開店したばかりの店の、柚子の皮を薄くスライスした「ゆずうどん」 で。
「毛帽子や 二人で食べた 柚子うどん」
その頃は、まだ髪が少なく、妻はいつもいろんな帽子を被って出かけていました。 今思えばもう少し続けていれば、・・・。
「あかねさす 昼の静かな 講話聞き 心清らか 過去懐かしむ」
あかねさす:日・昼・照る の枕詞
若い頃に、二人で出かけた時の気持ちが、回を重ねるたびに蘇ってきました。
2011年は東日本大震災などもあり、景気も悪く暗い年でした。
年が明けた最後の日に、明るく希望に満ちた年になるようにと、祈り終えました。