昨日。郷里に移動する際にマンガを2冊買う。高瀬志帆『二月の勝者』4巻とおかざき真里『阿吽』9巻。特急の中ではこの二冊と、『源実朝』『イオンを創った女』を読んでいた。
『二月の勝者』は中学受験塾を扱ったマンガで、受験だけでなく子どもが抱えるいろいろな問題や、親との関係、受験の意義、中学受験をめぐる実情、そのほかいろいろなことが取り上げられていて、面白い。それぞれの講師や子どもがみんなキャラが立っていて、まあ流石に実際の学習塾ではこんなこともないだろうが、自分の東京や埼玉での塾講師時代のことなど思い出しながら読んでいる。学校が題材だとなんだか色々面倒くさいことが多くて実際とは全然違う、みたいな感じになりがちだが、中学受験塾というのは使命は基本的にシンプルなので題材としては学校よりははるかに扱いやすいと思う。
 
阿・吽 (9) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
おかざき 真里
小学館
2019-02-12


 
『阿吽』は弘法大師空海と伝教大師最澄の二人が主人公で、この巻は薬子の乱前後、平城天皇末期から嵯峨天皇即位あたりのことが描かれていて、ともに唐に渡った橘逸勢を通じて皇后橘嘉智子、そして嵯峨天皇につながることで世間的な階梯も駆け上っていく空海と、南都仏教との対立から教勢が伸び悩み身体的にも苦悩を抱える最澄との対比がキラキラした絵柄で描かれていて、面白い。

 

入唐を途中でやめて桓武天皇の平癒のために帰国せざるを得ず、経典=学びに飢えている最澄が空海の持ち帰った経典をのみ貪欲に求めるのに対し、真言の教えを伝授され時期は早いものの満を持して帰国し、最澄との宗教対話を楽しみにしている空海との心のギャップが痛々しく、事実とフィクションの間に生まれるロマンというのはまさにこういうものだなと思う。