コミックゼロサム3月号でおがきちかさんの「Landreaall」第153話「王の窓」を読みました。
おがきちかさんの「Landreaall(ランドリオール)」、先月号でついにクレッサールにおけるDXとクエンティンとの戦いに決着がつきました。しかし色々なところで気になる状態は続いていて、特に一番気になっていたのがアトルニアの王都・フォーメリーにおける政府の要人たちである議長オズモ、DXの玉階(キングメーカー)アニューラス、ベネディクト・タリオの三人で密談中、クエンティンの呪いが発動し、アニューラスの「DXを王にしたい」というかくれた欲望が引き出され、「この二人がその障害になる」という思いの虜になり、巨大なネコを呼び出して二人を殺そうとする、と言う局面でした。
さて、どうなったのか。というところなのですが、
今月の扉はDXとフィルのツーショット。元気な高校生男子という感じです。それよりはちょっとワイルドかな。
ページをめくると、新王・ファラオン卿の籠る塔の場面でした。
そう、もう一つの気になっていた局面、意を決して祖父であるファラオン卿(そのことは秘中の秘です)に面会に来たロビンの場面からでした。付き添って来たのはフィルです。前回までを振り返ると、あろうことかファラオン卿はクエンティンの呪いによって過去の「後悔」を引き出され、窓から飛び降りようとしたところに二人が出くわす、ということになってしまっていたのでした。
そして新王に付き添っていたのがレイ・サーク。メイアンディアとレイはファラオン卿の「弟子」で、二人はファラオン卿を「先生」と呼ぶのですが、そのことは内密のことのようです。レイは単にアカデミーのチューターだと思っていたフィルは驚きますが、二人はなんとかファラオン卿を引き上げます。しかし、王は正気ではありません(認知症のような感じです)でした。実はファラオン卿の正気を保っていたのはメイアンディアの「天恵」の力だったのです。
今月号の場面はその続きです。
飛び降りようとして抑えられ、少し落ち着いたファラオン卿とレイ・サークを見て、フィルが疑問を持ちます。フィルはレイが街中でメイアンディアといるところを目撃しているので、フィルはレイとディアが恋人同士ではないかという疑いを持っている。で、新王妃であるディアがここにおらず、レイがここに居るということは、二人が耄碌した新王を操って国を乗っ取ろうとしているのではないか?と考えたのですね。それをそのまま尋ねてしまうところがフィルらしいわけですが。
レイはそれを、「陳腐な妄想だなあ。こんな面倒な国いらないよ」と言下に否定します。一方、また自分の世界の中に戻ってしまった大老=新王=ファラオン卿は、メイアンディアとの会話を思い出す。王は、息子であるローハルト卿の恋人、つまりロビンの母親のイゼットを探し、ローハルトがイゼットのことを忘れたのが呪いのせいだ(これはディアとイオンの会話で読者には明らかにされています)と伝えようとしたのですが、そのためにイゼットは反王政派に追われ、身を隠してしまった、ということを後悔しているのですね。その後悔を思い出した大老は再び身を投げようとして、三人に阻止されます。
落ちつかせられ、座らせられたファラオン卿は、「ロビン」とつぶやく。
ここからの場面は、本当に感動的でした。
そのことばを聞いたロビンの表情。
王は一人ごちます。「お前の息子を捜すのはやめたよ。」
王の言う「ロビン」は、息子=ローハルトの愛称なのですね。フォーメリーを追われてイゼットは、辺地であるDXたちの故郷・エカリープまで流れて来て、そこで息子を生み、ロビンと名を付けて亡くなった。事情を知らずに娼館の給仕をしながらまだ見ぬ父への思いを胸に育ったロビンと、領主の息子であるDXの関わりは、いままで本章で語られてきました。そして、父・ローハルト卿はすでになくなっていて、唯一の肉親が目の前にいる新王であることを、ロビンは知っている(DXやイオン、ライナスたちの調査の結果なわけですが)のですね。
「イゼット嬢のような目に合わせたくない。守ってやりたかったが・・・」
フィルはDXの言葉を思い出します。DXは、ファラオン卿がロビンを探さなかった理由を「守ろうとしたのかも」と言っていたわけです。DXの言うとおりだった。
「王様は、クソみてーに不自由な王城のいっとう奥で、お前に会うのを諦めてたんだ」
このフィルのセリフも、凄くいい。
フィルは言います。「ロビン!今だ。いまがそん時だっ!」
目を押さえたままの王ときょとんとするレイ。緊張を隠せないロビンはそれでも、言葉を絞り出すように言います。
「お じ い ・・・ さん。僕・・・僕です」と。
その言葉を聞いて、目を開けた王は、正気に戻っているようです。
「ま、まさか~~~」と驚くレイの口を、フィルは塞ぎます。ここであんたが口を出したら台無しだ、とばかりに。
王は目を見開いてロビンを見、ロビンの目には涙が浮かんでいます。
「ローハルトによう似ておる・・・そっくりだ。名前を教えておくれ」
跪いて「ロビン」と名乗る孫を、王は抱きしめます。「祖父をどうか許しておくれ」と。
「会えて嬉しい・・・です」
そのセリフの向こうから、ステンドグラス越しに光が入ってきます。
こういう演出は、本当にジンとしますね。
目を細めて見守るフィルと、青ざめているレイ。
苦労した甲斐があったぜ・・・というフィルに、「うえええ~自分が何をしたかわかっってるのかよパピー・グレイ(こっちの苦労はだいなしよ)」というレイに対し、フィルは「なんだテメエ空気読めよ!?(パピーって言うな!)」と怒るフィルが、最も王城の空気を読んでないところが可笑しいです。まあ、フィルにとってはそんなことよりもっと重要なことがあるだろ、ということなんですけどね。
思わぬ対面に感動する王ですが、ロビンとの対面で比較的長時間正気を取り戻したらしくはっとあることに気がつき、レイに言います。「お前は急いで塔を降りるのだ。クエンティンだ。彼の呪い・・・おそらく私だけではない。彼に触れたものに危険が・・・」
それを聞いてレイはすべてを察知し、飛び出して行きます。
つぶやく王。「クエンティン・シングフェルスは王を憎んでいる・・・」
この王とは、前王、つまり妄想により娘リルアーナを王妃と取り違えた王のことで、彼が起こした無謀な戦争がクエンティンの育ったザンドリオを滅亡させた。その前王を憎んでいることをクエンティンは全く隠していません。これは、クエンティンによる前王への、そしてひいてはアトルニアへの復讐であることに、新王であるファラオン卿は気づいたのですね。
しかしレイが去り、残されたのは王とフィルとロビン。フィルは「俺達どうすれば」と焦りますが、王はロビンの頬に手をやって「幸せかね」と尋ねます。「はい」という答えを聞いてうなずく王様。そしてまた王は、夢の世界に戻ったのでしょう。「誰かね」と尋ねます。「ロビンです。王様」という答えに、「そうか」と答える王様。手は、しっかりとつながれたままです。
ここは本当に感動します。王様は、短い正気でいられる時間に、言わなければならないことをすべて言い、聞かなければならないことをすべて聞き、そしてまた夢の世界に戻って行った。それがレイへの指示とロビンへの「幸せかね」という質問とその返事だったわけですね。
ここでしっかりと、二人の心がつながった。そのあとのことがどう展開するかはわかりませんが、ひとまずは本当に良かった。
しかし、事態は急を告げている。
場面はその、まさに風雲急を告げる議会。その議長であるオズモは、前に書いたようにクエンティンの呪いが発動したアニューラスに襲われていました。この議会に、オズモの姿はありません。
議会は、王制を廃止しろと主張する反王政派、前王の孫娘・失われた王女リルアーナの娘でクエンティンが後ろ盾についているユージェニを王位につけろと主張する真祖派(真祖とは、アトルニアを建国した6人の貴族たちの末裔のことで、前王や新王妃・メイアンディアのクラウスター家が属しています。)、その中間派である王政派に別れていますが、反王政派と真祖派のそれぞれ強硬派の声が大きくなって来ている。それは、クエンティンがそれぞれの派に違う意見の人を攻撃させる呪いをかけて、対立を煽ったこともあるわけです。オズモ、ベネディクト・タリオ、アニューラスたちの密談は本来この対立を沈静化させるためのものだったのですが、そのアニューラスにクエンティンの呪いが発動してしまっている。
そして、議会ではすでに、クレッサールでリゲイン・ルッカフォート将軍(DXの父)とユージェニ姫が剣を交え(クエンティンの陰謀です)、クレッサールに騎士団が派遣されたと言うことがもう知れ渡っていて、真祖派と反王政派がまさに一触即発というヒートアップした状態になってしまっているのでした。。
そして、そこに「そこまで!」と言って入って来たのが、血まみれのオズモ議長でした。
・・・
・・・
うーん。
すごい。
今月は特に、やはりファラオン卿とロビンの対面が何よりも大きな出来事だったわけですが、それはもちろんロビンの決意と、とにかくそれを実現させてやろうというフィルの「善意の暴走」のおかげでした。その「暴走」が王位を落ち着くところに落ち着かせようとする周りの人々の慎重な配慮や作戦を全部台無しにして、対面そのものを実現させるというのがポイントなわけですが、まあこのあたり慎重に並べたドミノを一撃で崩したような爽快感がありました。(笑)とてもよかった。
そして、「幸せかね」「はい」「誰かね」「ロビンです、王様」「そうか」
このやり取りが、本当にいいなと思います。
唐突ですが、「HUNTER×HUNTER」の30巻での、「蟻の王」メルエムと「軍儀(将棋のようなもの)の天才」コムギとの最後の場面を思い出しました。
死の直前であることを自覚しているメルエムが「最期をお主と(軍儀を)打って過ごしたかった」といい、コムギが「不束者ですがお供させて下さい」と答える場面です。そしてその次の一話のほとんどがメルエムとコムギのセリフ、「コムギ」「いるか」「はいないますとも」「どこにも行きません」「コムギ」「いるか」「はいなもちろん」と続き、「最期に名前を呼んでくれないか」というメルエムに「おやすみなさい・・・メルエム」と答える一連の場面です。これは本当に、いままで読んだマンガの中でも最も感動する場面のひとつ(いま引用のために読み直して、また涙が出てしまいました)なのですが、その場面を彷彿とするものがありました。
そして議会に血まみれの姿で現れたオズモ。オズモが生きていることはこれではっきりしましたが、それではベネディクト卿と、何よりアニューラスはどうなったのか。そして飛び出して行ったレイは、急を誰かに告げられたのか。ひょっとするとレイが飛び込んで、その場の急を救ったのかも、とも思います。レイとアニューラスはアカデミーで同窓ですから、何かアニューラスを正気に戻させるツボ?を心得ていたのかも、とか妄想してみます。
それはともかく、さて、来月はどっちのサイドから話が始まるか。いずれにしても、かなり大きなエピソードがまとめに入っているので、物語全体の大きなヤマのひとつを越えつつあるのだろうと思います。
この先どんな展開になって行くのか楽しみです。
そして、「Landreaall」27巻が2月25日(木)に発売されるとの告知がありました。
27巻は2015年9月号の147話から、6話収録としたら2016年の2月号まで、7話収録だったらこの3月号までということになります。描きおろし小冊子とドラマCDのついた特装版も同時発売とのことですので、そちらも楽しみにしたいと思います。
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一迅社 |
おがきちかさんの「Landreaall(ランドリオール)」、先月号でついにクレッサールにおけるDXとクエンティンとの戦いに決着がつきました。しかし色々なところで気になる状態は続いていて、特に一番気になっていたのがアトルニアの王都・フォーメリーにおける政府の要人たちである議長オズモ、DXの玉階(キングメーカー)アニューラス、ベネディクト・タリオの三人で密談中、クエンティンの呪いが発動し、アニューラスの「DXを王にしたい」というかくれた欲望が引き出され、「この二人がその障害になる」という思いの虜になり、巨大なネコを呼び出して二人を殺そうとする、と言う局面でした。
さて、どうなったのか。というところなのですが、
今月の扉はDXとフィルのツーショット。元気な高校生男子という感じです。それよりはちょっとワイルドかな。
ページをめくると、新王・ファラオン卿の籠る塔の場面でした。
そう、もう一つの気になっていた局面、意を決して祖父であるファラオン卿(そのことは秘中の秘です)に面会に来たロビンの場面からでした。付き添って来たのはフィルです。前回までを振り返ると、あろうことかファラオン卿はクエンティンの呪いによって過去の「後悔」を引き出され、窓から飛び降りようとしたところに二人が出くわす、ということになってしまっていたのでした。
そして新王に付き添っていたのがレイ・サーク。メイアンディアとレイはファラオン卿の「弟子」で、二人はファラオン卿を「先生」と呼ぶのですが、そのことは内密のことのようです。レイは単にアカデミーのチューターだと思っていたフィルは驚きますが、二人はなんとかファラオン卿を引き上げます。しかし、王は正気ではありません(認知症のような感じです)でした。実はファラオン卿の正気を保っていたのはメイアンディアの「天恵」の力だったのです。
今月号の場面はその続きです。
飛び降りようとして抑えられ、少し落ち着いたファラオン卿とレイ・サークを見て、フィルが疑問を持ちます。フィルはレイが街中でメイアンディアといるところを目撃しているので、フィルはレイとディアが恋人同士ではないかという疑いを持っている。で、新王妃であるディアがここにおらず、レイがここに居るということは、二人が耄碌した新王を操って国を乗っ取ろうとしているのではないか?と考えたのですね。それをそのまま尋ねてしまうところがフィルらしいわけですが。
レイはそれを、「陳腐な妄想だなあ。こんな面倒な国いらないよ」と言下に否定します。一方、また自分の世界の中に戻ってしまった大老=新王=ファラオン卿は、メイアンディアとの会話を思い出す。王は、息子であるローハルト卿の恋人、つまりロビンの母親のイゼットを探し、ローハルトがイゼットのことを忘れたのが呪いのせいだ(これはディアとイオンの会話で読者には明らかにされています)と伝えようとしたのですが、そのためにイゼットは反王政派に追われ、身を隠してしまった、ということを後悔しているのですね。その後悔を思い出した大老は再び身を投げようとして、三人に阻止されます。
落ちつかせられ、座らせられたファラオン卿は、「ロビン」とつぶやく。
ここからの場面は、本当に感動的でした。
そのことばを聞いたロビンの表情。
王は一人ごちます。「お前の息子を捜すのはやめたよ。」
王の言う「ロビン」は、息子=ローハルトの愛称なのですね。フォーメリーを追われてイゼットは、辺地であるDXたちの故郷・エカリープまで流れて来て、そこで息子を生み、ロビンと名を付けて亡くなった。事情を知らずに娼館の給仕をしながらまだ見ぬ父への思いを胸に育ったロビンと、領主の息子であるDXの関わりは、いままで本章で語られてきました。そして、父・ローハルト卿はすでになくなっていて、唯一の肉親が目の前にいる新王であることを、ロビンは知っている(DXやイオン、ライナスたちの調査の結果なわけですが)のですね。
「イゼット嬢のような目に合わせたくない。守ってやりたかったが・・・」
フィルはDXの言葉を思い出します。DXは、ファラオン卿がロビンを探さなかった理由を「守ろうとしたのかも」と言っていたわけです。DXの言うとおりだった。
「王様は、クソみてーに不自由な王城のいっとう奥で、お前に会うのを諦めてたんだ」
このフィルのセリフも、凄くいい。
フィルは言います。「ロビン!今だ。いまがそん時だっ!」
目を押さえたままの王ときょとんとするレイ。緊張を隠せないロビンはそれでも、言葉を絞り出すように言います。
「お じ い ・・・ さん。僕・・・僕です」と。
その言葉を聞いて、目を開けた王は、正気に戻っているようです。
「ま、まさか~~~」と驚くレイの口を、フィルは塞ぎます。ここであんたが口を出したら台無しだ、とばかりに。
王は目を見開いてロビンを見、ロビンの目には涙が浮かんでいます。
「ローハルトによう似ておる・・・そっくりだ。名前を教えておくれ」
跪いて「ロビン」と名乗る孫を、王は抱きしめます。「祖父をどうか許しておくれ」と。
「会えて嬉しい・・・です」
そのセリフの向こうから、ステンドグラス越しに光が入ってきます。
こういう演出は、本当にジンとしますね。
目を細めて見守るフィルと、青ざめているレイ。
苦労した甲斐があったぜ・・・というフィルに、「うえええ~自分が何をしたかわかっってるのかよパピー・グレイ(こっちの苦労はだいなしよ)」というレイに対し、フィルは「なんだテメエ空気読めよ!?(パピーって言うな!)」と怒るフィルが、最も王城の空気を読んでないところが可笑しいです。まあ、フィルにとってはそんなことよりもっと重要なことがあるだろ、ということなんですけどね。
思わぬ対面に感動する王ですが、ロビンとの対面で比較的長時間正気を取り戻したらしくはっとあることに気がつき、レイに言います。「お前は急いで塔を降りるのだ。クエンティンだ。彼の呪い・・・おそらく私だけではない。彼に触れたものに危険が・・・」
それを聞いてレイはすべてを察知し、飛び出して行きます。
つぶやく王。「クエンティン・シングフェルスは王を憎んでいる・・・」
この王とは、前王、つまり妄想により娘リルアーナを王妃と取り違えた王のことで、彼が起こした無謀な戦争がクエンティンの育ったザンドリオを滅亡させた。その前王を憎んでいることをクエンティンは全く隠していません。これは、クエンティンによる前王への、そしてひいてはアトルニアへの復讐であることに、新王であるファラオン卿は気づいたのですね。
しかしレイが去り、残されたのは王とフィルとロビン。フィルは「俺達どうすれば」と焦りますが、王はロビンの頬に手をやって「幸せかね」と尋ねます。「はい」という答えを聞いてうなずく王様。そしてまた王は、夢の世界に戻ったのでしょう。「誰かね」と尋ねます。「ロビンです。王様」という答えに、「そうか」と答える王様。手は、しっかりとつながれたままです。
ここは本当に感動します。王様は、短い正気でいられる時間に、言わなければならないことをすべて言い、聞かなければならないことをすべて聞き、そしてまた夢の世界に戻って行った。それがレイへの指示とロビンへの「幸せかね」という質問とその返事だったわけですね。
ここでしっかりと、二人の心がつながった。そのあとのことがどう展開するかはわかりませんが、ひとまずは本当に良かった。
しかし、事態は急を告げている。
場面はその、まさに風雲急を告げる議会。その議長であるオズモは、前に書いたようにクエンティンの呪いが発動したアニューラスに襲われていました。この議会に、オズモの姿はありません。
議会は、王制を廃止しろと主張する反王政派、前王の孫娘・失われた王女リルアーナの娘でクエンティンが後ろ盾についているユージェニを王位につけろと主張する真祖派(真祖とは、アトルニアを建国した6人の貴族たちの末裔のことで、前王や新王妃・メイアンディアのクラウスター家が属しています。)、その中間派である王政派に別れていますが、反王政派と真祖派のそれぞれ強硬派の声が大きくなって来ている。それは、クエンティンがそれぞれの派に違う意見の人を攻撃させる呪いをかけて、対立を煽ったこともあるわけです。オズモ、ベネディクト・タリオ、アニューラスたちの密談は本来この対立を沈静化させるためのものだったのですが、そのアニューラスにクエンティンの呪いが発動してしまっている。
そして、議会ではすでに、クレッサールでリゲイン・ルッカフォート将軍(DXの父)とユージェニ姫が剣を交え(クエンティンの陰謀です)、クレッサールに騎士団が派遣されたと言うことがもう知れ渡っていて、真祖派と反王政派がまさに一触即発というヒートアップした状態になってしまっているのでした。。
そして、そこに「そこまで!」と言って入って来たのが、血まみれのオズモ議長でした。
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うーん。
すごい。
今月は特に、やはりファラオン卿とロビンの対面が何よりも大きな出来事だったわけですが、それはもちろんロビンの決意と、とにかくそれを実現させてやろうというフィルの「善意の暴走」のおかげでした。その「暴走」が王位を落ち着くところに落ち着かせようとする周りの人々の慎重な配慮や作戦を全部台無しにして、対面そのものを実現させるというのがポイントなわけですが、まあこのあたり慎重に並べたドミノを一撃で崩したような爽快感がありました。(笑)とてもよかった。
そして、「幸せかね」「はい」「誰かね」「ロビンです、王様」「そうか」
このやり取りが、本当にいいなと思います。
唐突ですが、「HUNTER×HUNTER」の30巻での、「蟻の王」メルエムと「軍儀(将棋のようなもの)の天才」コムギとの最後の場面を思い出しました。
死の直前であることを自覚しているメルエムが「最期をお主と(軍儀を)打って過ごしたかった」といい、コムギが「不束者ですがお供させて下さい」と答える場面です。そしてその次の一話のほとんどがメルエムとコムギのセリフ、「コムギ」「いるか」「はいないますとも」「どこにも行きません」「コムギ」「いるか」「はいなもちろん」と続き、「最期に名前を呼んでくれないか」というメルエムに「おやすみなさい・・・メルエム」と答える一連の場面です。これは本当に、いままで読んだマンガの中でも最も感動する場面のひとつ(いま引用のために読み直して、また涙が出てしまいました)なのですが、その場面を彷彿とするものがありました。
そして議会に血まみれの姿で現れたオズモ。オズモが生きていることはこれではっきりしましたが、それではベネディクト卿と、何よりアニューラスはどうなったのか。そして飛び出して行ったレイは、急を誰かに告げられたのか。ひょっとするとレイが飛び込んで、その場の急を救ったのかも、とも思います。レイとアニューラスはアカデミーで同窓ですから、何かアニューラスを正気に戻させるツボ?を心得ていたのかも、とか妄想してみます。
それはともかく、さて、来月はどっちのサイドから話が始まるか。いずれにしても、かなり大きなエピソードがまとめに入っているので、物語全体の大きなヤマのひとつを越えつつあるのだろうと思います。
この先どんな展開になって行くのか楽しみです。
そして、「Landreaall」27巻が2月25日(木)に発売されるとの告知がありました。
27巻は2015年9月号の147話から、6話収録としたら2016年の2月号まで、7話収録だったらこの3月号までということになります。描きおろし小冊子とドラマCDのついた特装版も同時発売とのことですので、そちらも楽しみにしたいと思います。