岩崎夏海さんの「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「イノベーションと起業家精神」を読んだら」を読みました!

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら
岩崎夏海
ダイヤモンド社


今回はマンガではなく、小説、と言えばいいのか、ビジネス本、と言えばいいのか。あの「もしドラ」の続編?とでもいうべき「もしイノ」を取り上げたいと思います。

簡単にいえば面白かったです!私には、「もしドラ」よりずっと面白かった。最初の方はある意味地味な描写が多いのですが、「イノベーションと企業家精神」を読み解いて行く場面が続きます。ここは「もしドラ」と似ているのですが、この場面からして「もしドラ」よりもずっと面白かった。というか、「もしドラ」のときはあまりピンと来てなかったドラッカーの言葉が、今回はずっとすんなりと入って来た感じがします。

主人公の女子マネージャー岡野夢は、「もしドラ」の主人公の川島みなみのような活発な女の子ではありません。もっと地味で、他の人をいいなあ、うらやましいなあと思うような女の子。彼女が思い切って友達になった児玉真実の方がずっと主人公っぽいです。実際、ストーリーはしばらく真実が主人公になって進んで行き、夢はそのあとを不安げについて行くだけのような感じです。

以下、ストーリーの展開について書きます(その展開についての感想を書かないと感想にならないので)ので、ここまでのところで読みたくなった方は是非先に本書を読んで下さい。

気にならない方、ポイントを知ってからの方が読む気になるタイプの方は、どうぞ先をお読みください。

この物語の斬新なところは、休部して誰もいなくなってしまった私立の高校の野球部を、マネージャーたちが中心になって、「野球部とはマネジメントを学ぶ場」と定義し、先にトップマネジメントを形成してグランド整備などから手をつけて環境を整え、それから選手を募集するという展開になって行くところだと思います。これはさすがに驚きましたが、普通たとえば会社が社会人野球の野球部を作ろうとするときと言うのはそういう方向でやりますよね。選手がやりたいからと言って同好会を作って、と言う学校のような展開ではないと思います。でもそれを高校野球でやってしまうと言うのは、ちょっと読んでて頭がくらくらしました。これはジャンプのマンガにはなりにくい。(笑)

でもその展開が面白いんですね。それぞれの長所に応じてマネジメントの役割をふって行く時に、夢は人事担当になる。夢は、この野球部で自分がやりたいことは何かと聞かれて、「みんなの居場所を作りたい」と言ったのですね。そしてそれこそが「人事の役割」なんだ、と言うことになる。これは全く目からウロコでした。

そしてそんなことなんか出来るはずがない、とおっかなびっくりその仕事をしていた夢は、予選敗退をきっかけにマネージャーを辞めてしまった真実に代わって、トップマネジメントを任される。この展開も驚きましたが、その理由は、真実にも居場所を与えること、だったわけです。この展開も痺れました。

一番どんでん返しだと思ったのは、夢は地味な女の子で、みんなを見て「いいな、うらやましいな、あんな風だったらいいのにな」、と思う、そのそういうところが、「ひとりひとりの長所を見つけるのが得意で人の短所が気にならない」という、人事にもマネジメントにも最適の性格だった、と言うことになるところなのですね。

ここは凄いです。正に逆転の発想。天が下に人の役に立たない人はいない、という感じです。読み始めたときはまさかこの子がトップマネジメントになり、野球部の念願を叶えていくとは全く思いませんでした。

内容的にも、イノベーションとか人間の成長と言うことについて、ドラッカーの言葉だけでなくさまざまな本からの引用もあり、作者の岩崎さんの渾身の作品だと言うことがよくわかります。

私自身、マネジメントそのものよりもイノベーションとか人間の成長とか言う方面により関心があるので、今回は大変面白く、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」も、エッセンシャル版(「もしイノ」と同時発売なのでしょうか)ではなく全集本を買い、じっくり読んでいます。「マネジメント」は今のところ途中でギブアップしていますが、こちらは読み切れそうな感じです。面白いです。

ということで、この本は本当に面白かったです。おすすめの一冊になりました!