映画「進撃の巨人」(実写版・前編)を見ました!

Cinema★Cinema SP 2015 summer 2015年 8/13 号 [雑誌]: テレビライフ首都圏版 別冊
学研マーケティング


映画「進撃の巨人」(樋口真治監督作品、2015)を見ました!

「進撃の巨人」の実写映画については、映画化の構想の段階からいろいろ言われていましたし、1日に公開になってからも賛否両論様々な意見が出ていて、でも興行的には成功しそうだと言う話もあり、また9月19日には後編が公開になると言うこともあって早く見ないとと言うこともあり、他にもいろいろやることがあるんだけどなあ、なんてことも考えながら、フッと出来た隙間の時間に、木場の109シネマズでIMAXで上映していると言うことを知って、見に行ってきました。

一言で言うと、一言で言えない映画でした!(笑)

これは好き嫌いが別れる、というか賛否が分かれる映画だなあと思いました。観客もあまり多くなかったです。やはり残酷な場面があるということでしょうか、PG-12という年齢制限がついています。保護者の許可があったら12歳以下でも見てもいい、という制限なのだそうですが、観客に小学生はいなかったように思います。

事前にいろいろ雑然とした情報は入ってきていて、ツイッターなどでは圧倒的に「怖い!」という話が聞こえてきていたので、結構気合いを入れて見に行く必要があるのかなと思っていたのですが、私の印象としては「今まで見た映画で一番怖い」ということはなかったです。でも怖い人には怖いでしょうね。

以下、内容に関する感想になりますので、どうぞご了承の上お読みください。

原作の改編具合ですが、まあこれは難しいところで、「違う話だ」と思ってみると原作の重要な場面の重要なセリフとかがでてきてそれが気になるし、「進撃の巨人」だと思ってみるとあまりに大きな改変にオイオイと思うし、まあどういうものなんでしょうね。アニメが非常に忠実に作られていたし、そこでブームがすごく大きくなったということがあるので、実写ではかなりハードルが上がっただろうなと思うのですが、ただ、「何を見せたいか」ということでいえば、多分きっと、というのはまだ後編を見ていないから全体がわからないので断言はできないのだけど、成功してるんじゃないかとは思います。

個人的には、最初の超大型巨人と、エレン巨人に関しては、よかったと思います。評価したい、と言ったら偉そうですが、これは観客の求めるクオリティと実写化のリアル感をクリアしてるのではないかと思います。普通巨人に関しては、これは賛否がわかれるんじゃないかな。(笑)でもまあ、やりたいことはよくわかりました。巨人の皆さんが生き生きと楽しそうに演技している感じをどう評価するべきか。多分、だからこそ怖い、と感じた人の方が多いとは思うのですが。ちょっと「女形の無知性巨人」が多すぎた気もしなくはないですが。

それから、街の風景。原作でのシガンシナ区が「モンゼン」という街になっていて、ここの街の風景が、スターウォーズの第1作にでて来る街に似ていると言うか、私の持ってるイメージの中でいうと、チベットの街という感じが近いなと思いました。原作はどちらかと言うと中世ドイツの街並という感じですから、その辺は全然違いますね。でもでて来る廃墟の部分は現代のヘリコプターとかの残骸もあったりして、「文明が滅んだあとの近未来」的でもあります。

ストーリーも登場人物も全然違いますが、「エレンたちが巨人に襲われ、エレンは戦おうとするがアルミンを助けてエレンは巨人に食われてしまい、でもエレンが巨人化して他の巨人たちを撃退する」という部分は同じ。原作と話の大枠は違うのに、そこが同じというところがまたどう評価するべきか難しい。原作と同じ名前ででて来るキャラはエレン、ミカサ、アルミン、ジャン、サシャ、ハンジの5人。でもそれぞれ、設定は原作と微妙に違います。

一番大きな違いは、これはネタバレになりますが、私も見る前にどこかで既に読んで知っていたので書きますが、最初に巨人に襲われた際に、エレンは「恋人である」ミカサを見失ってしまい、それがある種のトラウマになってしまっているのですね。そして、実はミカサは「人類最強」のシキシマに助けられていて、彼に鍛えられて巨人殺しの名手になっている。二人は「壁修復作戦」の過程でオモテマチ(ここが軍艦島で撮影した場面なのだと思います)で再会しますが、ミカサはエレンに恨みを残していて、そしてどうもミカサはシキシマの女になっているらしい。それを見てエレンは絶望のあまり泣き叫びますが、それを止めたのが「結婚出来ずに生んだ子供の養育費を支給してもらうために」修復舞台に志願したヒアナ。彼女は傷心のエレンを押し倒し、「あの子の父親になって」と迫る・・・

まあ別の話ですよね、こうなってくると。(笑)

でもヒアナがらみのことがこの他にも狂言回しになってる部分が何カ所かあって、撮ってる間に存在が大きくなってきた「千と千尋の神隠し」の「カオナシ」みたいな感じがしてきます。

あ、水原希子さんのミカサはよかったですよ。よかったと言うか、きれいだった。私の中では「ノルウェイの森」の緑役、という感じなのですが、儚げで、ミステリアスで、強い。でもエレンに恨みがましい目を向けるところで、やはり原作のミカサとは全く違う。シキシマのかじりかけのリンゴをかじり、またそれをシキシマがかじるところなどは、いいんすかこのエロスは、と思ってしまいました。

原作の諫山創さんのフード理論から言って、リヴァイ兵長は「ものを食べない」存在なのですが、シキシマという人物は「リンゴを食べる」存在で、まあこの映画、なんというか生身の人間がでている、かなり肉食系の映画になっていて、そこが実は結構儚げな原作やアニメの世界とはそこが大きく違うんだと思いました。

まあ何というか、この映画は、「突っ込みどころに突っ込みながら楽しむ」映画だと考えればいいのかなとは思います。

どこかでAKB48の高橋みなみさんがでていたそうですが、それは気がつきませんでした。

あと巨人関連、ヒアナ関連のところでどうしても書きたいことがあるんですが、そこはちょっと我慢しておきたいと思います。その場面も、すごく実写版の独自性を感じましたね。

立体機動アクションは、かなりがんばってた感じでした。

もう一つ、この映画の印象をいうとすると、「誰もいいヤツがでて来ない感じ」と言えばいいでしょうか。どいつもこいつもいやなヤツ、という感じ。原作では皆それぞれにその存在としての筋が通っている感じがしたわけですが、ただ粗暴なだけだったりただ嫌みなだけだったり。特にシキシマはねえ・・・

でもまあ、その方が本当はリアルなんですけどね。そういう意味では。

原作では、絶望的な状況に、エレンや同期たち、また調査兵団が雄々しく立ち向かって行く、だからこそのファンタジーなのですが、この映画では絶望的な状況で、回りはみんないやなヤツ、という全然救いがないリアルであるところがある意味斬新に感じました。

でもミカサやシキシマは、何かを知っている。それがラストシーンと後編の予告シーンで示されているわけですが、その辺りをアリアドネーの糸にして、続きを楽しみにしたいと思います。

でもこうなったら、もっととことん絶望的な映画にしてほしいな、という気もしてきました。(笑)

100人が見て100人が楽しめる映画とは言えませんが、これを面白がれる人とはちょっと話をしてみたい、そんな映画だったと思いました。