ピアノの森(25) (モーニング KC)
一色まこと
講談社


モーニング47号で一色まことさんの「ピアノの森」第233話「スト・ラット」を読みました!

232話でついに、ショパン・コンクールで優勝を果たした主人公・一ノ瀬カイ。その余韻に、この7週間の間浸っていたわけですが、ついに物語が再開しました。

そして、昨日アナウンスがあった通り、今回から始まる26巻で、ついに1998年に始まり、足かけ17年に渡って掲載誌を変えながら連載されてきたこの作品も完結となります。とはいえ、1巻に収録されている話数は平均9.3話。計算上、あと9回か10回は本誌でも読めることになります。ついにラストスパート。まだ回収されていない伏線もかなりありますし、それがどこまで解かれて行くか。阿字野先生とカイの関係はどう変化するのか、また森の端でうごめく闇の勢力との関わり、また、世間的には明らかにされていないカイが森の端出身であることが明らかになるとどうなるかなど、気になることは沢山あります。

しかし、そんなことよりも今はまだ、この栄誉を手にした喜びの余韻、ですね。

沢山のフラッシュを浴びる中、両手を顔から離せないカイ。後から後から涙がこぼれてきているのですね。

会場は大興奮。まさに、このカイ優勝の仕掛人ともいえるシモン・ハウスネルとアダムスキが興奮して話し合っています。「どうだよアダムスキ!イチノセが優勝したぞ!」「凄いよシモン!あいつ最年少なんだぜ!」「でも公正だろ!」「もちろん公正だよ!これ以上のシビれる結果はないぜ!」

一方、愕然とした顔をしているのが雨宮父(洋一郎)。修平が出場しなければ、ショパコンの審査員になっていたかもしれない彼は、心底愕然とした顔をしています。(この顔相当ひどいです・笑)

「一ノ瀬が優勝?何が起きたんだ?純粋にピアノだけで順位をつけたと言うのか?あんな特別な才能は「特別枠」にしておくのではなかったのか?」と驚いています。今までなら、そう扱われてきた、と言うことですね。そして輪の中ではしゃいでいる修平を見て笑顔に変わります。「なんだその喜びようは…まるで子供のように…まるで自分のことのように…」ようやく雨宮父も気持ちに整理がついたようです。

合唱される「スト・ラット」を聞きながら、カイは感動を新たにします。「どうしよう!涙が止まらない どうしよう!顔を上げてみんなに応えたいのに…」

場内で合唱される「スト・ラット」。日本語訳が書かれています。「100年元気に生きて、100年私たちと一緒に、100年私たちとずっと一緒に生きて!」

「君が代は千代に八千代に」、と言う感じです。いつまでもこの時を、と思う思いは、洋の東西を問わないのですね。この光景を見た審査員たちも、目頭が熱くなっています。「まさかここでスト・ラットの大合唱が聴けるとは…」と。

しかし喜んでいる人たちばかりではありません。中国側、パン・ウェイの黒幕のコンは怒りに燃えています。パンはカイに手をのばし、「おめでとう脱帽するよ」と言います。握手する二人。「君のピアノはキセキなのかまぐれなのか…とにかく俺の中では大事件だったよ」と。「結果はキセキです」と応えるカイ。「まあ、審査は人がやるもんだから」と応じるパンを見て、コンは「なんといまいましい。パン・ウェイめどうしてくれよう」と不穏な雰囲気です。

改めてヤシンスキ委員長。「受賞者のみなさまおめでとうございます。…最年少優勝者が出るサプライズがありました。我々審査員一同この結果に驚くと同時に大変満足しています」とコメントしています。コンは上層部からの電話に出ることを拒否し、その場を去ります。「明日の授賞式およびガラコンサートでお目にかかりましょう」と言う声で発表が終わり、記者会見にうつります。

マスコミは委員長に殺到し、審査方法を問いただそうとしています。ポーランドのシマノフスキが優勝しなかったことが不服なのですね。そしてショパン協会のブゼク会長からも電話が審査員のピオトロ・ウェペルに。出ずに切ったピオトロは審査風景を思い出します。

結果は、カイが1.42、パンが1.47の僅差でした。そして3位のグラナドスとシマノフスキも、3.63と3.68の僅差。この2つについて審議が行われたようです。カイの結果を見て、日本人審査員は二人でビビっています。副委員長のパヴラスがこの僅差をどう処理するかについて論点を整理しています。1.点数どおりイチノセを一位とする。2.この二人にしぼって決選投票をする。3.二人を一位にする。4.一位なしで二人を二位にする。この四番めの案にはみな反対します。

ここで、最大のスポンサー・中国の代表であるコンに発言が求められますが、コンは結局介入する発言をせず、審査員が決めろ、と意外なことを言いました。で、パヴラスがこの点の通りの順位で言いと思う人に挙手を求め、結果どおりカイが一位になったわけでした。

なるほど、「同点」ではなく「僅差」だったのですね。

コンは思います。あのとき私がごり押ししていたらいくらでもひっくり返せたのに、と。そうしなかったのは、パン・ウェイ自身に介入するな、と脅されていたからでした。パンはコンを脅し、パン・ハオ(ウェイの養父)の事故を利用してパンを拉致したこと、ハオの事故もコンが仕組んだことだと世界にバラす、と言ったのでした。しかしコンは腹の虫がおさまりません。「パン・ウェイをどうしてくれよう」と何か企んでいます。

一方、ブゼク会長の電話に出たピオトロ・ウェペル。どうして私の電話にすぐ出ないんだ、と詰問する会長。応えられないピオトロ。

と言うことで今回は終わりで、全体に何か不穏なことが起こりそうな感じのヒキなのです。

ですが。

コンの方が何をしでかすかは分からないのですが、ブゼク会長はシマノフスキが優勝しなかったことに怒ってはいないんじゃないかな、と言う気がします。ブゼクはカイの推薦者の一人でもあるジャン・ジャック・セローと長年来の友人でもありますし、イギリスの新聞記者ビクトリアとデイビッドが起こした「パン・ウェイの真実」事件でセローの通報を受けて迅速に対応した人物でもありますので、公正にものを見る目はもっているのではないかと思うのですよね。

今後の展開でいえば、阿字野が手を引いたあと、だれがカイをサポートして行くのか。まあ、阿字野以上の人はいないだろうなと思いますけれども、物語がどうなるかは分かりません。

あと何回でファイナルになるのか、まだ分かりませんけれども、こうしたいきさつにどう決着をつけ、またカイの未来がどのように描かれて行くのか、本当に楽しみでなりません。

次回掲載は11月半ばとのこと。楽しみに待ちたいと思います!