ダ・ヴィンチ 2014年 10月号 [雑誌]
KADOKAWA


ダ・ヴィンチ10月号で『特集・進撃の巨人 進撃の巨人が終わる日』を読みました!(2)

(1)の続きです。昨日も書いたようにすごい充実した特集でした。今回は印象に残っていることをいくつか。

作者の諫山さんのインタビューは今までもいろいろなところで読んでいるのですが、今回のものは本当にじっくりと生い立ちの過程などについて尋ねていると言う印象でした。その中でも印象に残ったのは、専門学校の授業の一環として出版社に漫画の持ち込みに行った話。そこで現在も『進撃の巨人』の担当編集者である川窪慎太郎さんに見てもらい、川窪さんから電話が入った時が一番大きな飛躍だった、という話です。

そのこと自体は以前も読んだことがあったのですが、マンガ家になれる自信はなくても、心のどこかでかすかな自信があったのでは、とインタビュアーに問われ、「19歳の頃、専門学校の寮の狭い部屋でネットをやりながら落書きしていたときに『進撃の巨人』のプロットを思いついたんです。人食い巨人によって絶滅寸前の人類という世界観が面白いんじゃないかって。そのプロットに関しては自信があったと思います。」と言い、でも川窪さんから電話がかかってきて、「それまで評価がゼロでしたから、躍進度合いではその時が一番とんでもなかったですね。」というのは全くその通りだろうなと思うのですが、寮の部屋で妄想していたことが一挙に現実に近づいて行くというような感覚でしょうか、と問われて、「むしろ現実が遠のいたような感覚でした。」というのが諫山さんらしくて面白いなあとと思いました。

「自分のマンガが雑誌に載ってコンビニに並ぶなんて到底あり得ないと思っていたので、信じられない世界に入って行くというか、どんどん現実感がなくなって行くような気がしましたね」

『進撃の巨人』と言うのはプロットとしてすごく面白い、と言うことはもちろん読者の方は思っていると思いますが、それだけでなくこれだけ読者の裏をかく展開が生み出せる、そういう蓄積を持った、力のある作者さんだと思うのですが、ご本人はそういうことに自信がないと言うよりも現実とは思えないうちにあれよあれよと言ってしまうと言う感覚を持っていると言うのが、とても面白い感じがしました。

それから伏線についての考え方ですが、「ラストを決めてから制作に入る映画と違って毎月の締め切りがある中でそれをやらなければいけないので難しい」と言いながらも、「長期連載になると数年後の自分に期待して、あの辺に蹴っとくかと言う感じでロングパスを出しているようなものなんです」といい、「実際のところ数年前に出したパスのボールが落ちて来る瞬間まで上手く自分がトラップできるか分からない感じがあって、それまでちょっとドキドキしてます」と言う感じが、以前別冊マガジンの目次の一言コメント欄に「2年前に出したロングパスが通った感じ」と書いておられたのを思い出して、なるほどそういうことかと思ったのでした。

それから今回特に印象に残ったのがご両親へのインタビュー。今までどういう家庭で育ったのか全然見当がつかなかったのですが、実はお父さんは家具メーカーのデザイン部門に勤めていた方で、定年退職後、梅を栽培しているのだそうです。また現在ではかつての「豊かな川」を取り戻す運動のNPO法人「大山環境アスリート」の理事長を務められていると言うことでした。またお母さんも児童関係の仕事をしていたそうで、なるほどそういう環境の中で育って、豊かな自然環境も含め、そういう『文化的資本』が背景にあるんだなあと改めて思いました。離れにあったと言う諫山さんの部屋もロフト付きのかなり立派なもので、こういう環境の中で豊かな想像力が育まれて行ったんだなあと思いました。

考えてみたらそうなのですが、諫山さんの名前自体が「創(はじめ)」というクリエイティブな名前なわけで、やはりそういう思いを込めてつけられた名前だったそうです。

今まではどちらかというと独特の感性を持った不思議なクリエイターだと言う意識が強かったのですが、やはりそれも無から生まれたものではない、いろいろなものに支えられて生まれ育った才能なのだなと強く感じたのでした。

そんな諫山さんの『進撃の巨人』、いよいよ明日9日に別冊少年マガジン10月号が発売ですから、第61話が読めますね。今から楽しみです!