進撃の巨人(14) (講談社コミックス)/講談社

¥463
Amazon.co.jp

(表紙画像は仮のままです)

別冊少年マガジン8月号で諫山創さんの『進撃の巨人』第59話を読みました!リヴァイの言葉の重みと新たに獲得した信頼!

ここのところ、『進撃の巨人』はまず早く読みたいので日付が変わってすぐに別冊少年マガジンをKindleで購入し、朝になってから別マガ本誌を買う、という感じになっています。電子書籍もいいのですが、私はiPadAirで読んでいて本誌よりも画面が小さいということと、やはり紙に印刷した感じが捨てがたい(絵柄が特にそうなのだと思います。『One Piece』だと電子書籍の方がかえって読みやすいので)ということで、本誌の方も買っているのですね。

こちらは単行本が出たときに載っている範囲のものを資源ゴミで出しているのですが、今月号は8月8日発売の14巻の続きで、来月の別マガは2話収録になると思いますから、今月何度も読み返して終わり、ということになりそうです。無駄なお金と手間と言えばそれまでですが、そんなふうにしていろいろな形で楽しみたい、という感じがする希有な作品なんだと言うことでしょう。

58話ではリヴァイ班がリヴァイと地下時代に関係のあったケニーの率いる中央憲兵に襲われ、リヴァイは辛くも窮地を脱しますがジャンが絶体絶命のピンチ、という描写と、エレンとヒストリアを奪取した中央憲兵がヒストリアの父・レイス卿(真の王で調査兵団を追いつめていると思われている)に二人を差し出し、意外なことにレイス卿がヒストリアに「今まで済まなかった」と抱きしめる、という謎に満ちたラストでした。

59話はリヴァイが逃げ込みケニーが襲撃した酒場前の描写から。新聞記者が二人、状況を目撃者から聞き取り、そのことで憲兵団師団長のナイル=ドークと話をしています。ケニーが憲兵と名乗ったこと、調査兵団と憲兵団が争ったことが噂として町中に広がっていると言います。

年配の方の新聞記者・ロイは新型立体機動装置の話、リヴァイ兵長と争った話、多数死傷者が出た話を「壁全土に知れる前に」新聞で伝える、と言いますが、ナイルは待て、と言います。まだ我々も何が起きたのか把握できてない、というのです。

するとビュレという若い新聞記者は中央憲兵がやったということですね!と勢いづきますが、ロイは中央憲兵のことは記述しません、とナイルに言うとナイルは助かるよ、と言います。そして「新型立体機動装置の話もなしだ」というのでした。とにかく中央憲兵の報告を受けるまで、記事にするのは待ってくれ、と言ってその場を去ります。

新型立体機動装置は散弾銃のついた、まさに調査兵団を殺すためだけの兵器。そしてそれが憲兵団に隠されてたということは、自分たちもあの銃口が向けられる対象外ではない、ということかとナイルは思います。

憲兵団の責任者であるナイルは、この事態をかなり深刻に受け止めているわけですね。秘密であるはずの中央憲兵がこれだけ出張って来ているということがいったい何を意味するのか、ナイルにも良くわかっていないわけです。

一方のリヴァイ班。アルミンが泣きながら何度も吐いていて、それをミカサが慰めています。ミカサに背中をさすられてアルミンは、絶望に満ちた眼で「ミカサもこうなったの…?」と尋ねます。ミカサは「え…」と戸惑いますが、アルミンは「あ…あぁ…ごめんミカサ…ごめん…ごめん…」と繰り返します。ミカサは「いいよ」というのですが。

ミカサは隠れている馬小屋の中に戻ると、そこではサシャがリヴァイの右肩の傷を縫っています。訓練兵団ではこういう訓練もするのでしょうか、それともサシャが村で覚えた技術なのでしょうか。ミカサは、ジャンにライフルを渡し、「見張り。交代」と言います。ジャンは、アルミンは、と言いますが、ミカサは、まだ外。というのでした。

そう、58話の絶体絶命のピンチのジャンが救われたのは、馬を御していたアルミンが懐から取り出した銃で中央憲兵の女性兵士を撃ち殺したからだったのです。

何とも言えない表情をして馬車から転げ落ちた女性兵士。空中で心配げに見守るミカサと呆然とするジャン。アルミンは鬼気迫る表情で「街を抜けるまであと少しだ!」と言って馬車を駆ります。

そう、アルミンは、自分が人を殺したことにショックを受けて、泣きながら吐いていたのでした。だからミカサに「ミカサもこうなったの?」と聞いたのは、ミカサも人を殺したときはショックを受けた?と聞いたことになりますし、また自分と同じように人を殺した、人殺しをし手を汚したんだよね?と聞いたことになります。

確かにミカサは9歳のときにエレンと自分を救うために誘拐団を殺しているし、また敵を殺せるときは殺せ、と言うリヴァイの命令に「はい」と言っていますが、アルミンは言ってしまってから自分が思わずそんなことを言ってしまったことを後悔してミカサにごめんと言ったのでした。

夜。見張りにたつサシャと、食事をとるリヴァイ、ジャン、コニー、ミカサ、アルミン。アルミンは食が進まないらしく、リヴァイは「こんな汚え馬小屋じゃ飯なんぞは食えねえか?」と尋ねます。アルミンは「いえ」と言って、ジャンに尋ねます。相手が銃口をジャンに向けていたのに、なぜぼくの方が先に撃ったんだろう、と。返事を躊躇するジャン。それを見てリヴァイは、「相手が一瞬、撃つのを躊躇した。そうだろ?」と言います。

僕を殺した人は優しい人だったんだろうな。僕はすぐに引き金を引けたのに…と自分が暗黒面に堕ちて行くのを感じるアルミン。

それに対し、リヴァイは「アルミン、お前の手はもう汚れちまったんだ。以前のお前には戻れねえよ」と言います。「なぜそんなことを!」というミカサ。リヴァイは「新しい自分を受け入れろ。もし今もお前の手が奇麗なまんまだったらな、今ここにジャンはいないだろ」と言います。

「お前が引き金をすぐに引けたのは、仲間が殺されそうになったからだ」とリヴァイは言います。みなの動揺が止まります。リヴァイのこういうセリフはいいですね。「お前は聡い。あそこで物資や馬、仲間を失えば、その先に希望はないのだと理解していた。アルミン。お前が手を汚してくれたお陰で俺たちは助かった。ありがとう。」と。

複雑な表情を浮かべるアルミン。ジャンはリヴァイに、「あなたのやり方は間違っていると思ってました。自分で手を下すのが怖かったからです。間違っていたのは自分でした。次は必ず撃ちます」と。

普通ならここで終わりそうな話ですが、リヴァイはまださらに言います。「ただしそれはあのときあの場所においての話。何が本当に正しいかなんて俺は言ってない。そんなことは分からないからな…お前は本当に間違っていたのか?」と逆に尋ねます。ジャンは戸惑って、「え?」というのでした。

ここはいいですね!ただジャンが「仲間や希望を守るために次は俺が殺す!」と決意するだけでは百万年繰り返されて来た人類の戦争の歴史がさらに更新されるだけですが、殺さずにピンチに陥れるところだった判断を、「本当に間違っていたのか?」と尋ねられたことで、さらにジャンは自分のすべきことについて考えざるを得なくなって行くのです。

これは、巨大樹の森で初代リヴァイ班が女型の巨人に襲われたとき、巨人化するなと他の班員に言われて思いとどまったエレンに、リヴァイは「お前は間違ってない。やりたきゃやれ」と言ったことと通じますね。私はこのときのリヴァイは相手がエレンだったからそう言ったのかと思っていたのですが、そうではないのですね。リヴァイは徹底的にそう言う人な訳です。何が正しかったか、そんなことは誰にも分からない。だからせいぜい悔いのない方を選べ、と。命令への絶対服従を求めているようで、実は判断力を含めた100%の力の発揮を班員に求めている、逆に言えば100%の信頼を班員にしている凄い度量なんだなと思います。

さて、次に出て来るのは、懐かしやストヘス区憲兵団の新兵、マルロとヒッチ。ほぼ2年ぶりの登場です。アニメにはすでに登場していましたね。あの女型捕獲作戦から、物語の中の時間としては数ヶ月というところでしょうか。森の中を巡回して、おそらくは逃走した調査兵団を探っているマルロとヒッチ。

マルロはヒッチに「調査兵団が民間人を殺して逃げ回ってるなんて、変だと思わないか?」と尋ねます。ヒッチは、「調査兵団がストヘス区で街を戦場に変え、いくつもの死体を運び、アニが行方不明になったことを忘れたの?」と言います。ヒッチは、調査兵団がそうしたことを強く批判的に思っているのです。しかしマルロは、それは許しがたいけれども、潜伏していた巨人をみつけ、とらえることに成功した。そんな調査兵団が解体されたら人類はどうなる、と言っていると、ヒッチは水音に気づき、「静かに!」と言います。

小川で水を汲んでいたのはアルミンでした。背後から迫り、動くな、というマルロとヒッチ。狙いを定めて指示を出す二人の背後から、襲いかかったのはリヴァイとミカサでした。

とらえられたマルロとヒッチ。兵服と装備を脱がせ、縛り付けた二人から奪った装備にアルミンとミカサを着替えさせ、憲兵団に潜り込んでエレンたちが運ばれた場所を探る、というリヴァイの作戦でこういう行動に出たのでした。ここで二人の名前が明らかになりますマルロ・サンド二等兵とヒッチ・ドリス二等兵。マルロは、「本物のリヴァイ兵長だ…」と思います。アルミンとミカサに中央憲兵らしき人物を捕捉して手がかりをつかめと命じるリヴァイ。

「マルロ、ヒッチ、お前らだが…」と言いかけたリヴァイに、ヒッチはいきなり「あなたたちのせいでストヘス区の人民が100人以上も死んだのを知ってますか?」と尋ねます。そしてジャンに、「あんたたち南方訓練兵団出身なんだってね。アニとは仲が良かったの?」と尋ねます。そして「あの日以来アニが見つかっていないのは、巨人にぐちゃぐちゃにされて見分けつかなくなったからでしょ!」と怒りをぶつけます。

リヴァイはそれに対し、「いいや。潜伏してた巨人の正体がアニ・レオンハートだったからだ。末端の新兵まで知っていいことじゃねえがな」と衝撃的な事実をぶつけます。動揺するマルロとヒッチ。何とも言えない表情のミカサ、アルミン、ジャン。アニをとらえた実動部隊はこの3人とエレンでしたからね。「全く嫌になるよな。この世界のことを何も知らねえのは俺らもみんな同じだ。お前たちは出発と同時に解放する」とリヴァイは言うのでした。

マルロは、「リヴァイ兵士長、あなたたちが間違っているとは思えません。本当に調査兵団がリーブス商会を殺したんですか?」と尋ねます。リヴァイは、「会長らを殺したのは中央憲兵だが、何が事実かを決めるのはこの戦に勝った奴だ」と答えます。

我慢できなくなったマルロは、「俺に協力させてください!この世界の不正を正すことが出来るのなら俺はなんだってやります!中央憲兵を探る任務なら俺にやらせてください!変装なんかよりずっと確実なはずです!」と叫びます。「何だお前は…」というリヴァイでしたが、ジャンは「こいつ…あいつに似てる…多分…本物のバカだ…」と思います。もちろん、ジャンが「本物のバカ」と言えばエレンのことに決まっています。リヴァイがダメだ、というのを聞いて、ジャンは賭けに出ます。「兵長、俺にやらせてください」と。ジャンの顔を見たリヴァイは、「任せる」というのでした。

このあたり、「信長のシェフ」で秀吉や主人公のケンたちが何かを申し出たときにその顔を見て「いいだろう」という信長の雰囲気にそっくりだなと思いました。

ジャンは二人を連行し、見えないところで二人を殺す、と言い出します。「信じてくれ!」と言うマルロにジャンは迫り、ナイフを振り上げますがわざと転んでナイフを渡します。「ヒッチ逃げろ!」というマルロですが、飛び上がったジャンはマルロに銃を突きつけ、「俺の銃の方が早い」と言います。マルロは、「待て!俺は本当に味方だ!俺たちは殺し合う必要なんかないんだ!」と叫びます。「じゃあ俺にナイフを渡してみろよ。それが出来たらお前は本当に今の生活を捨てて俺たちに加担してすべてを敵に回していいと思っていると、信じてやる。だがそんなこと信じられるわけがねえだろ?どう考えたら劣勢の俺たちが今から人類を救えると信じられるんだよ」とジャンは言うのです。

するとマルロは、「じゃあ何であんたは、そんな調査兵団なんかやってんだよ。」と言います。ジャンははっとします。「俺は腐った憲兵をただしたくて憲兵を選んだ。だけど入る兵団を間違えたよ。あんたがこうやって命をかけて戦い続ける限り、俺はあんたを信じる」というのでした。「はっ」と息を抜くジャンに、戻って来たヒッチが棒で殴りつけます。手を縛られたままだからバットを振り回すような感じです。今読み直してみると、これは作者渾身のギャグですね。痛い目に合うのはエレンやアルミン(昔はライナーも)が多かったのですが、ジャン来たかー、と思いました。「この馬面がーっっっっっ」て可笑し過ぎます。

マルロはヒッチを止め、彼は俺を試しただけだ、と言います。もし俺が本当にあんたたちを信じてなかったら、俺はあんたを殺していた。逆になぜあんたは俺をそこまで信用したんだ?と尋ねます。「何かお前…俺の嫌いな奴と似てたからな…あのバカに…」と言うジャン。マルロは「そのバカって…アニが行ってた奴と同じ奴か?」と尋ねるマルロ。ここのところいいですね。「知らねえよ。バカばっかいるから…」と言うジャン。「マルロ、お前の覚悟は証明できた。俺たちに力を貸してくれ」と言います。

場面変わって瀟洒な城か屋敷の見える草原に潜むリヴァイ班たち。マルロとヒッチのつかんだ情報で、中央憲兵の根城を発見したのでした。雰囲気から言って、そこにはレイス卿とヒストリア、ケニーとエレンがいる場所と思われます。リヴァイは「いくぞ。今度はこっちから仕掛ける。」というのでした。

今回は見所はアクションというよりは人間ドラマでしたね。リヴァイがアルミンを励まし、ジャンを諭す場面。それから、ジャンが命がけでマルロとヒッチという協力者をつかむ場面。ジャンは、リヴァイにああいわれたからこそ、迷いなく自分の勘を信じてマルロの申し出を受け入れる策を取ったわけですね。

来月は新たな信頼をつかんだリヴァイと104期たちが、ついにレイス卿の前に現れるのでしょうか。エルヴィンやハンジたちはどうなっているのか。そしてその他の謎は。ますます次回が楽しみになるのでした。

予告マンガによると、来月9日発売の別冊少年マガジンの表紙は『進撃の巨人』、そして悔いなき選択・寸劇の巨人・巨人中・Before the fallのスピンオフ祭と、14巻着せ替えカバー付き、だそうです。前日の8日には単行本も発売されるわけですし、『悔いなき選択』の2巻も発売。4月9日以来の『進撃祭』がまた再来する、という感じになりそうです。

目次のコメントでは諫山さんが「二年ぐらい前に蹴ったロングパスが通ったら気持ちいいです」と書いていますが、これはマルロとヒッチのことなんでしょうね。見事に通ったと思います。憲兵団の微妙な立場がこれからどうなるかも楽しみですね!

***

あとで気がついたのですが、最後の屋敷に迫るため草原に潜むメンバーの中に、アルミンがいません。アルミンがどこで何をしているのか、また楽しみが増えました!