One piece (巻1) (ジャンプ・コミックス)/集英社

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尾田栄一郎さんの『One Piece』を読んでいて、こういうのって何か見たことあるな、と言う気持ちになっていたのですが、わかりました。

それは歌舞伎です。歌舞伎の中でも、『歌舞伎十八番』と言われる、市川宗家が得意とする『荒事』と言うジャンルが特にそうだと言えるでしょう。

『歌舞伎十八番』は市川家のお家芸で、先きごろなくなった十二代目の市川團十郎さんや、現在の主である十一代目の市川海老蔵さんが担ってきた、いかにも江戸歌舞伎らしい荒唐無稽なヒーローものの作品が多いのです。

ストーリーはシンプル、主人公が正義の味方で敵役が悪、悪い奴は巨大で尋常でない力を発揮しますが、主人公が超人的な力を発揮してみなやっつけてしまう。そして主人公がカッと目を見開いて見得を切る。そう言う作品が多いわけです。

主人公ルフィはいつも明るくにこやかでどんな難局にも動じませんが、時々マジな顔をしたり感情をあらわにしたりする場面があり、またゴム人間の身体を駆使して敵をやっつけたり弾を跳ね返したりと言う場面がありますが、それは歌舞伎の見得を切る場面と同じだなあと思います。

お芝居でも、近代の芝居は基本的に心理劇ですのであまり超人的な人間が出てきたりはしませんが、歌舞伎はよく「マンガの世界」という言い方もされるようによく似ているなと思います。

似ていると言えば、例えば仲間を集めて旅をするところなどは、『ドラゴンクエスト』などのRPGにも似ていますね。そう言うのも起源をたどれば桃太郎が鬼が島に鬼退治に行くときに犬や猿や雉をきびだんごでつって家来にして行く感じに近いものがありますし、そう言う意味で凄く日本的な部分がこの『One Piece』にはあるなと思います。

『進撃の巨人』などは、どちらかというとアメリカン・コミック(アメコミ)の影響を受けている感じがしますし、舞台も西欧中世的でダークでゴシックな雰囲気に近いものがありますが、『One Piece』の天真爛漫さ、出てくる敵の無意味な巨大さとか権力への固執ぶりとかの怪物性は歌舞伎的で、実はとても日本的なお芝居の伝統を引いているんだなと思いました。

まだ1巻を読んだ感想ですが、読み進んで行くにつれてさらに広がりが出てくるのだろうと思います。楽しみにしたいと思います。