言霊 (KCデラックス)/講談社
¥630
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山岸凉子さんを私が最初に読んだのは、バレエダンサーを目指す姉妹を描いた『舞姫 テレプシコーラ』でした。この作品に強い衝撃を受け、またとても感動して、そういえば学生時代にすごくはやっていたなあという印象のあった、けど読んでいなかった『日出処の天子』を読み、また衝撃を受けました。そのあと『テレプシコーラ』続編を『ダヴィンチ』の連載で読み、またデビュー作である『アラベスク』も復刻版で読み、怪奇ものの短編集もいくつか読んでいます。


ご本人はバレエマンガかでなければ怪奇系の作品というのが多いと書いていらっしゃるのですが、昨年買った『言霊』(講談社、2013)はその両方が収録された作品集でした。


メインの表題作は「本番に弱いダンサー」がポジティブな言葉の重要性に気づき、その壁を乗り越えていくという話です。こういう要素は『テレプシコーラ』でもときどき触れられていましたが、この作品ではその一つのテーマに絞られているのでわかりやすかったです。


また壮大なシンデレラストーリー的な作品でなく、愛を獲得し国内のバレエ団への入団が図れるというくらいの、つつましやかな夢の実現(それでも相当大変だが、団員の生活はもっと大変)であるところが、よりリアルなものでした。


後半は「怪談」になりそうでならないくらいの話がいくつかエッセイ的に取り上げられています。でも山岸さんは、今では怪異話を書かなくなったのだそうです。それはなぜかと言うと、『テレプシコーラ』のあとで『ダヴィンチ』に連載されていた『ケセランパサラン』というマンガの題材になった、いまお住まいの新しい家が、怪異話を拒否しているというのです。


何というかそれ自体がある意味怪異現象であるわけですが、そういうことが起こって描けなくなったんだそうです。なんだかそういうこともあるのかなあと面白く思いました。


今後はバレエものだけに行くのか、それともまた新境地を開拓するのか、今年でデビュー45周年になる山岸さんですが、今後がまた楽しみになっています。