陰陽師-瀧夜叉姫- 1(リュウコミックス)/徳間書店
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『コミックリュウ』で夢枕獏さん原作・睦月ムンクさん漫画の『陰陽師 瀧夜叉姫』が連載されています。


『陰陽師』と言えば岡野玲子さんの漫画の連載がありますね。1993年から2005年まで、足掛け13年『コミックバーガー』と『月刊メロディ』で連載されていました。単行本も全13巻で完結しています。岡野さんは現在でも『メロディ』でその続編である『陰陽師 玉手匣』を連載されていて、こちらもすでに単行本が3巻出ています。私は岡野さんの絵と作中の安倍晴明と源博雅の会話が好きで、1巻からずっと買い続けていました。『玉手匣』の方もずっと単行本でフォローしています。


陰陽師 (1) (Jets comics)/白泉社
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でも、『陰陽師』の連載後半からは岡野さんは夢枕さんの原作からかなり遊離して、独自の世界を展開するようになりました。表現も小説的な部分が少なくなり、岡野さんのファンタジーコミック的な世界が展開するようになって、論理では追いかけて行けない、壮大な作品になって行きました。

陰陽師 玉手匣 1 (ジェッツコミックス)/白泉社
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『玉手匣』の方では、晴明の嫡男・朔が出てきて後日譚的に話が展開していきます。もう夢枕さんの位置づけは「原作」から「原案」になっていて、ますます奔放に岡野さんの世界が展開しています。話は大江山の鬼の話になっています。


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一方睦月さんの作品は俵藤太・平将門を中心に展開しています。まだ「瀧夜叉姫」にどうつながっていくのかはよくわかりませんが、小説的なストーリー展開になっていますので、(私は夢枕さんの原作を読んでないのではっきりしたことは言えませんが)原作に忠実に書いておられるのだと思います。


最初は岡野さんの絵のイメージが強すぎて、睦月さんの絵には若干抵抗があったのですが、最近では睦月さんの絵もいいなと思うようになってきました。


特に、平将門が異形として出てきてからの化け物的な風貌は、睦月さんならではの表現だなと感じています。線が細い印象があったのですが、日本画的な味わいのある岡野さんの線とはまた違うシャープな線の良さが、また日本画的なとぼけた岡野さんの魑魅魍魎とはまた別の、何というのでしょう独特な鬼気迫る化け物絵を描かれていて、読んでいて凄いなと思うようになってきました。


睦月さんはご自分のサイトの自己紹介としてイラストレーターとしています。普通の漫画とはまた違う独特の雰囲気は、イラストレーション的な感覚からきてるのかもしれません。


3月号の第22話では先月出てきた平将門の側妾の桔梗が凛としたたたずまいを見せていて、このキャラクターがいいなと思いました。この『瀧夜叉姫』、まだ単行本は買っていないのですが、だんだん買う方向に傾いてきています。(笑)本当に本棚的にもお金的にもどうなんだと思っているんですが…


小説と、漫画化と、さらなる漫画化。そんなふうにクロスオーバーして広がっていく魅力が、安倍晴明という人物にはあるのかなあと思いました。