私たちの身体は食べたものから作られています。
もちろん、食べたものそのものではなくて、食べ物から取り入れた栄養素を使って体の部分を作ったり、体に必要な物質を合成したりしているという意味です。
食べるものが不適切だと、体の組織や器官が適切に作られません。
できの悪い組織や器官は、本来の機能を果たせません。
低栄養、栄養不足がまさにこの状態であり、体の各部分は果たすべき役割を果たせません。
低栄養とは、厳密な定義はありませんが、栄養不足や栄養失調の中でも、エネルギーになる栄養素とたんぱく質が必要な量を下回っている状態を指します。
低栄養にならないために必要な糖質と脂質
エネルギーは、その名前の通り、体が活動するための燃料です。
体のエネルギーに使われる物質の原材料となるのは、糖質と脂質です。
体が健康で、病気をしていなくても、糖質や脂質を十分に摂っていないと、身体は動きません。
頭はボーっとして、考えがまとまらず、身体はだるく、動くことができません。
低栄養にならないために必要なたんぱく質
一方のたんぱく質は、体の材料です。
糖質や脂質は十分でも、たんぱく質が不足していると、健康な身体は作られないのです。
たとえば、髪の毛や皮膚。
たんぱく質が足りない生活が続くと、高齢者でなくても、髪はぱさぱさになり、肌はみずみずしさを失います。
髪や肌などの見た目が悪くなるのは、ちょっとした病気や大病には一切繋がりません。
ですから、高齢者にとっては、重要ではないように思えます。
しかし、たんぱく質は他にも体の材料としてとても重要です。
たとえば、内臓、血管、骨などもたんぱく質からできています。
高齢者のたんぱく質不足で問題になるのは筋力の低下
このうち、高齢者の低栄養が原因でたんぱく質不足から、質が落ちると大変問題になる箇所の1つが筋肉です。
筋肉の成長や維持にとってたんぱく質はとても重要です。
ボディービルダーなど、筋トレに励む人は、多くの場合、プロテイン飲料を飲んでいます。
プロテインは、日本語でたんぱく質です。
筋肉を太く大きくするのに、トレーニングだけでなく、プロテインを摂ることが重要だからです。
たんぱく質は、動物性のものでは、肉や魚に多く含まれています。
植物性のものでは、それほど多くなく、大豆製品には豊富ですが、他の植物には多くなく、野菜などには入っていません。
高齢の方が、低栄養に陥ってたんぱく質の摂取が足りないと、筋肉を維持できません。
お年を召した方は、ただでさえ、長距離を歩いたり、重いものを持ったり、長時間立っていたり、体を大きく動かすスポーツをしたりと、若い人や中高年の人が日常的に行っている活動を普段する機会に恵まれていません。
ですから、筋肉への刺激が乏しく、筋肉が簡単に落ちやすいのです。
それなのに、低栄養でたんぱく質が少なければ、筋肉は見る見る落ちていきます。
しかも、高齢の方は、一度、筋肉が落ちると、再びつけるのに、若いときより長い時間がかかるのです。
高齢の方が、入院などして、筋肉が落ちると、元に戻すのには、大変な努力が必要です。
筋肉の中でも、脚の筋肉が落ちると、日常生活で、バランスを崩したときに、とっさにバランスをとったり、腕で支えたりといったことがしづらくなります。
こうして転倒するリスクが高くなります。
これは、大怪我につながり、場合によっては数日間寝たきりになってしまいかねません。
そうすると、筋肉は一気に落ち、寝たきりが長期化すれば認知力の低下も心配になります。
こうならないためには、たんぱく質の摂取がとても重要です。