こちらの帯留めは『戦前日本のジュエリー4 和装用装身具(女性用)・男性用装身具編』に掲載したものですが、細かなところをアップしておりますので、冊子をご購入いただきました方にもご覧いただけましたら幸いです。

 

横の長さ約6.1センチ、重さ16.7グラムのどっしりとした帯留めです。芥子玉真珠の流れるようなグラデーションの使い方が秀逸で、アールデコの雰囲気を残しつつも曲線を活かした気品溢れるデザインはさすが御木本製です。

 

 

彫金細工が立体的になっています。中央の合成アレキサンドライトは光源の違いで僅かに青色or赤色に変わります。

 

 

オールド大倉の白磁の皿に乗せてみました。彫金の細部とK18WGのやや黄色味を帯びた地金の色がおわかりいただけると思います。量産とまではいきませんが、作家ではなく御木本真珠店に勤める職人がコツコツと作り上げていたのですから、他店とは異なる当時の御木本のハイレベルぶりがよくわかります。

 

刻印です。「貝にM」「WG」と「K18」があります。

 

 

実はこの帯留めには一箇所ハンダ付けの修理跡がありました。それが彫金の細やかさに紛れていて、私ですら気づいたのは購入の1ヶ月後でした。購入店に事情を話してハンダは除去してもらいましたが、やはり接合部分は取り除くことができないので、見た目はほとんどわからないとはいえ少々残念ではあります。アンティークジュエリーは「どこかが傷んでいるのでは」とまず「疑いの目」(笑)で見ることが大事ですね。