私は特撮マニアではありませんが、先日観た昭和特撮ドラマの有名作『仮面ライダーV3』(1973~74年放送)の主役(宮内洋)と準主役(山口暁)のリアルな確執があまりにも面白かったので、ちょっとツッコミを入れつつ、大人の視点からそれを取り上げてみようと思います。私も子どもの頃は完全なテレビっ子だったので、80年代くらいまではよくドラマを観たものですが、画面に出るほどあからさまな俳優同士の衝突を見たのはこれが初めてです。本当に「監督もうコイツらなんとかしろよ」(爆)レベルのガチの意地の張り合いなので、勘のいい子どもなら薄々気づいていたかもしれません。
実は、以前挙げた特撮関係の記事がなかなか好評で、頑張って書いた身としては嬉しい限りなのですが、流石にこのブログでの特撮話は今回で終わりにしますので(というかこれ以上は無理、笑)よろしければお読みください。よく考えればもう50年近くも前の古いドラマなのですが、戦前文化に慣れ親しんでいる私としてはつい最近の出来事のように感じます(笑)。
山口暁と宮内洋は昭和を代表する特撮俳優ですが、活躍した時期のみならず「アクションが堪能なうえ清潔感のある若手二枚目枠」という、俳優としての立ち位置もほぼ同じでした。山口は宮内と同年齢ですが(公式では宮内は2歳年下ということになっていますが実際は45年生まれで山口と同じです)、若い時から特撮テレビドラマで活躍していたため、芸歴では宮内よりも先輩に当たります。私はつい最近まで知らなかったのですが、60年代に幼少期を過ごした人なら名前を知っている人は多いと思います。
「アオキです。よろしくお願いします、ダン隊員。」
「ウルトラセブン」(67〜68年放映)第30話『栄光は誰れのために』山口暁ゲスト回
正直この頃の山口の演技はあまり上手くないのですが(汗)、それでもぱっと目を引く美貌と真っ直ぐで力強い眼は別格のオーラを放っていました。この一瞬のシーンだけで、主役に対する彼の羨望・嫉妬・野心のすべてが見事に現れています。
かたや宮内洋は東映ニューフェイスとして70年に実質的デビューを果たし、看板番組「キイハンター」のレギュラーで人気を得ます。先日東映チャンネルで何話か観てみたのですが、黒目がちの切長の目がきらりと光る美人の上、アクションも上手く、ちょいワルでありつつとろりとした色気を纏っているという、確かにそれまでの若手俳優にはなかったであろう際立つ魅力がありました。当時の東映が全面的に宮内を売り出していたのも頷けます。ただこの頃の宮内さんもやっぱり演技がイマイチなのは山口さんとお揃いでした(笑)。
その宮内が初主役を務めたのがテレビ特撮ドラマ『仮面ライダーV3』で、実質ライバル格の山口はその最終編(43〜51話)に準主役として登場しました。で、観終わった後の率直な感想なのですが、
結局この二人はどういう関係にあったのかさっぱりわかりません。友人?先輩後輩?敵味方?仲間?
というのも、下の画像をご覧になればお分かりいただけると思いますが、
「悪に染まった結城丈二と教え諭す側の風見志郎」の両者の演技が完全に逆(爆)
私も今までいろんなドラマを観てきましたがこんなケースは初めてです。製作側やスタッフは何も言わなかったのでしょうか?
元デストロンのリーダー結城丈二(山口暁)
主役の風見志郎(宮内洋)
山口扮する結城丈二は組織の科学グループのリーダーで優秀な科学者ですが、その人格と才能を妬まれて内ゲバに遭い、右腕を失いながらも辛くも脱走、仲間も全員殺されたため復讐を誓うものの、武器は右の義手だけなので到底敵わず、また右腕を改造してしまったため人間社会にも戻れず、しかも悪とわかっていても自分を受け入れてくれた組織への未練がどうしても捨てきれず、と、これだけでハリウッド映画が1本出来そうなほど心の葛藤に苦しむ複雑なキャラに設定されています。しかも、孤独で自分を見失っていた時期に組織につけ込まれたとはいえ、結城は自らの意思で組織に加入し、犯罪行為に加担していたのですから、そもそもヒーローになる資格のない真のダークヒーローでした。それを踏まえて山口は完全に大人向けのドラマとして演じています。こんなに難しいキャラをいきなり出されても小学生にはさっぱり理解できなかったでしょうが、ライダーマン結城丈二は「大人になってから評価の変わる特撮キャラNo.1」としてよく知られています。
一方、そんな暗い過去を持つ人物を受け止める側の風見志郎ですが・・・
えーっと、なんでそんなにガラが悪いの?(汗)
どっちが道を間違えた悪人だよ(笑)と思ったので、少し調べてみましたところ、
「なんでこんなの突っ込んでくるんだろうと思いましたね。V3だけだと、もたないのか、足りないのか!とカァーッと来ましたね。やるんだったら、V3が終わった後に新番組で「仮面ライダーライダーマン」としてやればいいのにってね。」(京本政樹『ヒーロー交友録』宮内洋インタビューより)
演技力のせいもあるでしょうが、明らかに機嫌が悪いのが見事に画面に現れています。まあ完全に主役を持っていかれているので心底悔しかったのはわかりますが、宮内は当時まだ20代の若造なのですから、ここはやはり監督か誰かがガツンと注意してやるべきでした。主役がこんな態度では山口もさぞ演じにくかったことでしょう。
「ほら、結城君にも年賀状が来てるぞ」
初の顔合わせなのにすっとレギュラー陣に溶け込む山口暁は流石です。一応左端に風見がいるのですが一瞬で存在が消えて・・・笑。
ちなみに、私は他のドラマでは宮内洋が「ガラが悪い」と思ったことは一度もありません。ワルというよりキザが先に立ったクールビューティーといった感じで、しかも少し可愛らしさの残る雰囲気がとても魅力的だったのですが、よりによって主役ドラマがこんなことになっていたとは本当に驚きました。
悪そうにニヤリと笑っても決して崩れないのですよ(笑)。ちなみにこちらの方がV3より後のドラマです。
『助け人走る』(74年)の宮内演じる「島帰りの龍」
ちょっと長くなってしまいましたので次に続きます。