「国民歌謡」とは国民の健全な精神の育成と戦意高揚を目的として戦時中にラジオで放送された歌、程度の知識しかなくて誠に申し訳ございませんが、当時の楽譜を手に入れましたのでこちらで紹介します。戦時中の放送ですから戦意高揚的な曲が多いのですが、初期の『椰子の実』のように今でも歌い継がれる名曲もあります。楽譜は日本放送協会(NHK)により出版されたもので、定価5銭で広く売られていたようです。中でも下の二曲『愛国の花』(12年)『太平洋行進曲』(14年)は大変人気があったようで、特に『愛国の花』はあまりの反響に映画まで製作されたとのことです。

『愛国の花』は、国に尽くす良妻賢母という当時の女性の模範を示すような内容の歌で、とても私ごときには真似できないのですが(笑)、詩の内容よりも作曲家古関裕而の曲が素晴らしく、今聞いてもとても軽やかで素敵なメロディです。

 

楽譜の裏側です。

 

 

YouTubeで、当時のレコードを蓄音機(多分)で流している動画がありましたので紹介します。著作権も切れていることでしょうし違法動画ではないと思いますので・・・

 

こちらです→『愛国の花』

 

当時の人気歌手だった渡辺はま子が歌っているのですが、今聴くと正直あんまり上手いとは思いませんが(笑)、澄んだ声がこの曲にとても似合っているので是非お聴きください。昭和12年にタイムスリップできます。

 

 

もうひとつは『太平洋行進曲』です。レコードが何種類か出ているようですので国民歌謡の中でもなかなか人気があった曲と思われます。実際聴いてみて、曲は勇壮で凛々しいし、歌詞は戦意高揚といってもまあ今でも許容範囲かなと感じますので、こちらもYouTubeで当時のレコードをかけている動画がありますので興味のある方はどうぞお聴きください。テノールは私の好きな藤原義江です。彼は本来はもう少し柔らかい声なのですが、曲の内容に合わせてはきはきした歌い方に変えています:

 

こちらです→『太平洋行進曲』

 

 

古いレコードは慣れていないと聞き取りにくいので、歌詞を書いておきます:

 

海の民なら 男なら

みんな一度は憧れた

太平洋の 黒潮を

共に勇んで 行ける日が

来たぞ 歓喜の血が燃える

 

今を雄々しく 大陸に

明るい平和築くとき

太平洋を 乗り越えて

希望はてない 海の子の

意気を世界に 示すのだ

 

仰ぐ誉の 軍艦旗

みよしに菊を いただいて

太平洋を 我が海と

風も輝く この朝だ

伸ばせ皇国の 生命線

 

遠いわれらの 親たちが

いのちを的に 打ち樹てた

太平洋の 富源をば

更に探ねて 日本の

明日の栄を 担うのだ

 

潮と沸き立つ 感激に

しぶきをあげて 海の子が

太平洋に 船脚を

揃えて進む ひびきこそ

興る亜細亜の 雄叫びだ

 

 

ところで、二番の「大陸に明るい平和築く時」とあるのは支那事変の完遂の意味だと思うのですが、それと位置的に反対側にある太平洋とどう繋がっているのか、探っても仕方がないのですがいつも気になっています(笑)。