昭和初期の1円は現在に換算するといくらぐらいになるのかは、戦前アンティークを集めている者にはとても関心の高い事柄です。『昭和戦前編 日本大雑誌』(流動出版、昭和54年)には、昭和12年頃までの雑誌の手記や短編小説が集められて原文のまま掲載されていますが、そこに徳山 璉(とくやま たまき)という当時有名な歌手が雑誌『現代』昭和9年5月号に載せた「有終の美を全うする」という一文があります。それは、おそらく『現代』編集部が企画した、10円を一日でどのように使い切るかというもので、徳山が実際東京をあちこち廻って10円を何に使ったのかが記されています。当時の東京の物価がよく現れているのでここで紹介します。(ちなみに下記の金額残りはすべてタクシー代です)


昭和9年2月21日の、東京の物価です:


松坂屋の食堂でのお茶とお菓子    30銭

御徒町から神田駅までの切符代     5銭

日本ビクター(レコード会社)の食堂のハヤシライス   25銭

東宝劇場の地下室のグリルでの夜の定食   1円

コロンバンのショコラ(おそらくチョコレートドリンク)   30銭

地味なネクタイ   2円

キャラメル一箱   5銭

喫茶店での日本茶と羊羹   15銭

スイートポテト10個   1円


仮に1円=現在の2,500円で換算してみますと、


松坂屋の食堂でのお茶とお菓子    750円

御徒町から神田駅までの切符代     125円

日本ビクター(レコード会社)の食堂のハヤシライス   625円

東宝劇場の地下室のグリルでの夜の定食   2,500円

コロンバンのショコラ(おそらくチョコレートドリンク)   750円

地味なネクタイ   5,000円

キャラメル一箱   125円

喫茶店での日本茶と羊羹   375円

スイートポテト1個   250円



おおよそですが、結構当たっているのではないでしょうか?


私個人の感覚では、大正の終わりには1円=5,000円程度、そこから昭和恐慌を経てインフレになり、
おそらく日本の統制経済が始まるまで(昭和13年頃?)には当時の1円=現在の2,000円くらいになったのでは、と感じています。

当時の物価を知るのに有益な本では、森永卓郎監修『物価の文化史事典』(展望社、2008年)がありますので、詳しくお知りになりたい方はそちらをご覧になられるとよいと思います。ただ、詳細なので全体像がちょっと掴みにくいかもしれません。



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